トランプ前政権は、経済面における中国とのデカップリング(分断)を実現すべく様々な策を講じた。だが、投資に焦点を当てて見ると、分断は実現に至っていない。それどころか、数字は投資のさらなる拡大を示す。米投資会社は利益の源を中国に求め、中国は米国をはじめとする外国からの投資を望む。
中国で人気のショート動画アプリ「快手(クアイショウ)」は、地政学とはまるで無縁の世界に存在する。投稿された動画では、おばあさんがペットのチワワとザ・ビートルズのヒット曲「ヘイ・ジュード」を歌ったり、出稼ぎ労働者が工事現場で踊ったりしている。農業従事者が豚肉入りの餃子を作る様子も見ることができる。
●米中の投資家による、相手国債券・株式の保有高
出所:Rhodium Group/US Treasury TIC dataset as reported Dec 31 2020/Financial Times

だが快手科技が2月5日*に予定する香港上場は、米国が中国に対して取る戦略的対抗政策が抱える根本的真実を明らかにする。金もうけに目を向ければ、両国の間には嫌悪することより引かれることの方がずっと多いのだ。
今回の快手の新規株式公開(IPO)は新型コロナウイルス感染症の世界的流行(パンデミック)が始まって以来最大の規模になるといわれている。最大で63億ドル(約6600億円)を調達する見込みだ*。
このIPOおいて、フィデリティやブラックロックといった米投資運用大手が大きな存在感を示す。彼らの高い関心は、ドナルド・トランプ米大統領(当時)が推進した「中国との完全なデカップリング(分断)」が未完に終わったことを表す数多くの事柄の一つにすぎない。
米投資顧問会社シーフェアラー・キャピタル・パートナーズのニコラス・ボースト氏は、「金融分野での分断どころか、米中2国間の投資関係は今や世界最大級の規模に達した。さらに、他にはないペースで拡大している」と話す。
不整合の元は租税回避地
「トランプ前政権が団結して中国への投資削減を進めたにもかかわらず、米投資家による中国証券の保有高は過去数年間で急増した」(ボースト氏)
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