米国のバイデン新大統領は、最低賃金を時給7.25ドルから15ドルに倍増させる計画を推進する。景気刺激や格差解消に加え、パンデミックの中で働くエッセンシャルワーカーに給与で報いるとの側面がある。大統領選での公約であり、エコノミストらも支持に傾いているが、共和党と企業からの反発は根強い。

賃金引き上げの公約は、バイデン氏の当選を後押しした(写真=AP/アフロ)

 米アーカンソー州メルボルンに住むメンディ・ヒューズさん(46歳)は、米小売大手ウォルマートで働いている。時給11.62ドル(約1217円)と賃金があまりに低いため、食事はベークドポテトと冷凍食品で済ませるしかない。節約のため食事を抜くことさえある。

 ヒューズさんはシングルマザーで、子どもを1人育てながら10年以上ウォルマートで働いてきた。「やっていくのはたいへんだ。食料品は買えないし、請求書の支払いもできない」と彼女は訴える。

 米国には、ヒューズさんのように時給15ドル(約1570円)未満で働く労働者が3200万人いると推定される。その多くは、ジョー・バイデン新大統領が自分たちの賃金を引き上げてくれることを当てにしている。

 バイデン大統領は就任後、連邦の最低賃金を引き上げるべく調整を進めている。連邦最低賃金は2009年以来、7.25ドル(約759円)に据え置かれてきた。同大統領が打ち出した総額1.9兆ドル(約200兆円)に及ぶ包括的景気対策法案に、最低賃金を15ドルへと徐々に倍増させる条項を盛り込んだ。

 バイデン大統領の尽力を、急進左派は熱狂的に迎えた。彼らはかねて「ファイト・フォー・15ダラーズ(15ドルに向けた戦い)」と呼ばれる賃上げ運動で共闘してきた。同大統領の方針は同時に、企業の不安をかき立て、共和党からの反発を呼んでいる。

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