トランプ政権の対中政策は、強硬な姿勢を取りつつ経済的に依存する、矛盾したものだった。米国という求心力を失った西側諸国は対中政策で足並みをそろえることができず、中国に主導権を渡してきた。バイデン新大統領の就任を機に、西側諸国は連携して一貫した対中政策をとらなければならない。

<span class="fontBold">バイデン大統領は、習近平国家主席にどう対するのか</span>(写真=AP/アフロ)
バイデン大統領は、習近平国家主席にどう対するのか(写真=AP/アフロ)

 米国に新大統領が就任した今、西側世界は新たな対中国政策を必要としている。米中両国政府の関係は今後何十年にもわたり、地政学から見た世界情勢を形作っていく。ジョー・バイデン氏が率いる新政権は、その枠組みを決める機会を手にしている。

 中国に対する西側のアプローチをめぐって最も頻繁に問題にされるのは、中国を経済のパートナーとして扱うのか、それとも競い合う大国と見るのかという点だ。西側は、経済関係を重視する立場と戦略的競争に重きを置く立場をいいかげんに使い分けてきたため、合理性のあるバランスを取ることができていない。

 それゆえ中国政府が勝者となっている。中国政府は今では、誰はばかることなく独善的に振る舞い、世界の最重要国としての立場を声高に求めている。

 バイデン大統領の就任を機に、米国をはじめとする民主主義諸国は、新たなアプローチを軸に団結すべきだ。米国では対中強硬派が主導権を握っている。香港における民主派の弾圧、新疆ウイグル自治区でのウイグル族の拘束、台湾に対する軍事的威嚇、インドとの国境紛争、オーストラリアに対する経済制裁といった最近の中国政府の動きに反応してのことだ。しかし、強硬な姿勢は、それ自体では優れた戦略にならない。

「1つの中国政策」を

 それよりも有効な基盤となるのは一貫性だ。経済、安全保障、外交、軍事の一連の政策を同じ方向に向ける必要がある。ドナルド・トランプ大統領(当時)は、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席に対して強硬な姿勢を取っていると自賛した。だが実際には、そのけんか腰の態度と、農産物の対中輸出を増やして国内の支持層を満足させようとする取り組みとは相反するものだった。

 トランプ政権で国家安全保障担当大統領補佐官を務めたジョン・ボルトン氏の言葉を借りるなら、トランプ大統領の外交政策はすべて、再選のための選挙運動だったのだ。

 中国政府は台湾の位置づけについて「1つの中国」という表現を使う。これをもじって言うなら、米新政権は「1つの中国政策」を目指すべきだ。中国およびその近隣諸国との間にある数々の関係を、明確な目的に向けて1つの政策にまとめ上げる。

 中国は南シナ海を支配しようとしている。この動きと、次世代通信規格5Gや人工知能の分野での主導権争いとを切り離して考えることはできない。一帯一路構想で欧州へと手を伸ばす中国政府の思惑ともつながっている。

続きを読む 2/2 同盟国との連携が不可欠

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