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アマゾンの広告事業が2020年、大きく成長したもようだ。購買意欲の高い消費者は、グーグルではなくアマゾンのサイトでじかに検索する。この需要を狙う企業にとってアマゾンへの広告出稿は不可欠だ。フェイスブックらとの3強体制も視野に入る。

2020年に大きく伸びる
●アマゾンのデジタル広告収入の推移
注:パソコン、携帯電話、タブレット、その他のインターネット端末に表示されるものを含む。形態は問わない。他のサイトに支払う費用を除いた差し引きの金額
出所:eMarketer/Financial Times

 新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的流行)でネット通販の利用が急増した。これを受けて、米アマゾン・ドット・コムは予想どおり、四半期で初めて売上高1000億ドル(約10兆3000億円)を達成しつつある。同社はまた、これまで見過ごされがちだった別の事業も大きく成長させた。広告事業である。

 アマゾンが運営する巨大な商取引市場にますます多くの企業が出店するようになったため、自社の存在を際立たせたいブランドは巨額の広告料を投じるようになった。

 その結果、アマゾンの「その他」事業(その大半は広告事業)が、小売部門、クラウドコンピューティング部門、「プライム」サービス部門をしのぐ勢いで成長している。

 金融データを提供する市場調査会社、米ファクトセットによると、アマゾンのその他部門の2020年の収入は前年比47%増の210億ドル(約2兆2000億円)。アマゾンはこの急成長をてこに、オンライン広告市場の巨人、米グーグルの牙城を切り崩しつつある。

 調査会社の米eマーケターで主任アナリストを務めるアンドリュー・リプスマン氏は「アマゾンが創造しつつある広告事業の規模がいかに大きいかを世間は十分に認識していない」と指摘する。

 「我々は今も、グーグルが20~21年、従来の基準で見て堅固とはいかないまでも手堅い成長を遂げると予想している。だが、そこにアマゾンが徐々に食い込んできている」(同氏)

広告主が求める情報を提供

 アマゾンが提供するデータは広告主にとってたまらなく魅力的なものだ。それは単なるネットの閲覧傾向にとどまらない。投資した資金がどれほどの効果を発揮しているかの詳細を示すとともに、消費者の実際の購買動向を20年以上にわたって分析してきた知見が詰まっている。

 世界最大の広告代理店グループ、英WPPでアマゾンに関する研究拠点(ACE)を運営するエリック・ヘラー氏は次のように見る。「私はアマゾンに支払われた広告料がどれだけの価値を持つか、よりよく理解することができる。取引をそっくりそのまま見ることができるからだ」

日経ビジネス2021年1月11日号 90~91ページより目次