米政府が、米ファイザーなどが開発した新型コロナワクチンの接種を開始した。これから、その接種の優先順位が問題となりかねない。米国の医療は富裕層に厚い。州ごとに対応も異なる。バイデン氏が率いる次期政権に期待が集まるが、米国の医療制度が抱える傷は深い。

<span class="fontBold">ファイザーなどが開発した新型コロナワクチン接種のリハーサルに臨む医療従事者</span>(写真=ロイター/アフロ)
ファイザーなどが開発した新型コロナワクチン接種のリハーサルに臨む医療従事者(写真=ロイター/アフロ)

 12月7日の月曜日、筆者はかかりつけの米ニューヨーク大学(NYU)ランゴーン医療センターからうれしいメールを受け取った。

 メールにはこう書かれていた。「新型コロナウイルスのワクチンが来年初めには当センターに届く予定です。誰がいつ接種できるのか、詳しい情報が分かり次第、ご連絡させていただきます」

 このメッセージには、注意事項が添えられていた。同センターの医師は、詳細の連絡がいつ頃来るかまったく分からないので、当面、問い合わせは控えてほしい。

 たとえ、こうした問い合わせの大半が新型コロナウイルスの感染を過度に心配する人々からのものであったとしても、報道によれば、ニューヨーク(およびその他の地域)の医療機関の多くが、真っ先にワクチンを接種したいと切望するお金持ちや権力者からの要望に日々悩まされているという。事実、どうすればいち早くワクチンを打てるかという疑問は、金持ち階級の間で様々な臆測を呼んでいる。

 ワクチン接種をめぐって不確実性と懸念が高まる中、倫理意識の高い医療グループのほとんどは、いかなる配布計画であれ、できる限り公正に実行すべく全力を尽くそうとしている。米国有数の医療専門家、ウィリアム・ヘーゼルタイン氏は数日前、「混沌(カオス)かそれに近い状態が起きつつある」と筆者に語った。

闇市場が必ず生まれる

 NYU医学部の生命倫理学者アーサー・キャプラン氏も、医療ジャーナルのSTATに次のように語った。「間違いなく、ブラックマーケットが出現するだろう。救命効果や生命維持効果がある医薬品で、供給が不足しているものには、いずれもブラックマーケットが生まれる」

 この問題は米国に限ったものではない。だが、米国では倫理問題がとりわけ悩ましく、感情的なものとなりやすい。これには少なくとも2つの理由がある。

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