中国国有の石炭大手、永煤集団の債務不履行がもたらす影響が、中国の国有企業全体に広く及んでいる。直接の原因は親会社の経営失敗のしわ寄せ。後ろ盾である地方政府に救済余力が乏しかったことが響いた。国有企業は全般的に社債の発行が難しくなり、高金利での資金調達を余儀なくされている。

<span class="fontBold">習近平(シー・ジンピン)国家主席が大規模な国有企業改革に乗り出すとの見方がある</span>(写真=新華社/アフロ)
習近平(シー・ジンピン)国家主席が大規模な国有企業改革に乗り出すとの見方がある(写真=新華社/アフロ)

 中国国有の石炭企業、永城煤電(永煤)集団は、ほんの7~8年前まで国内屈指の優良エネルギー企業だった。

 永煤が中国中央部の河南省に保有する鉱山には、良質の石炭が大量に埋蔵されている。国有銀行は同社に低金利の貸し付けを行おうと懸命だった。最盛期の2013年には同社の売上高は1274億元に達した。

 同社のある上級経営幹部は匿名を条件に、この時期について「我々は中国で最も利益を生む炭坑で、国内で最も高い給料を得ていた」と話す。

 だが業績が急激に悪化し、状況は一変した。同社が拠点を置く永城市には現在、建設が中断されたまま荒れ果てた建物が点在する。同社の従業員の多くは何カ月も給料が支払われていない。彼らは小麦粉の袋詰めと販売で何とか暮らしの帳尻を合わせている。

 しかし、永煤の苦境がようやく中国全体の問題と見なされるようになったのは、同社が今年11月に30億元(約480億円)の社債を償還できず、債務不履行に陥った時だった。

永城煤電の債務不履行を機に急上昇
●中国におけるAAA社債の平均利回り
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出所:Financial Times
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 この事態に直面して、15兆ドル(約1600兆円)と世界第2の規模を誇る中国債券市場に激震が走った。地方政府が管理するほかの企業も次々と債務不履行に陥った。こうした企業は中国経済のかなりの部分を担っている。

 これらの債務不履行は中国の金融システムを通じて各所に飛び火した。アナリストによれば、この結果、国につながる企業は資金調達が難しくなっている。中国の国有企業に何があろうと当局が救済に入るはずだという、投資家が長く依拠してきた前提は、跡形もなく崩れ去った。

 北京に拠点を置くコンサルティング会社プレナムの陳龍氏は、「影響が最も大きかったのは社債を発行する国有企業だ。河南省の国有企業はここ数週間、社債の発行が一切できなくなっている。社債を発行できない期間が長引けば、それだけ問題も大きくなる」と語る。

 永煤が陥った苦境は、中国全土のほかの国有企業に生じる問題の先触れになるとの見方もある。同社の社債を購入した北京のある投資家は、「永煤が経験した事業の失敗は、ファンダメンタルズが脆弱な国有企業のどこに起きても不思議ではない。債務不履行に陥る国有企業がこれから続いて現れるかもしれない」と語った。

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