ニュージーランド、ドイツ、アイスランド──。女性が首脳を務める国では新型コロナによる死者数が少ない。この事実は我々に、政治指導者に必要とされる資質について考えさせる。謙虚さと共感。人々に行動の変化を促すのに、女性が持つこれらの特性が役立っているかもしれない。

共感を示し、分かる言葉で話すアーダーン首相(写真=新華社/アフロ)

 ニュージーランドの政治の世界に4月初旬、「歯の妖精」が舞い降りた。新型コロナウイルスの感染対策として厳格なロックダウン(都市封鎖)を敷く最中、ジャシンダ・アーダーン首相は記者会見で、「歯の妖精*1とイースターバニー(復活祭のうさぎ)*2はどちらもエッセンシャルワーカーだ(編集部注:だからロックダウン中でも働くことが認められる)」と発言したのだ。この演説の動画は世界中に広まった。

 あれは単なる政治劇の一幕だったのか。そうかもしれない。だが同首相が示したユーモアと配慮、そして人間性は、1つの興味深い問いを投げかける。新型コロナ感染症との戦いに向けて国民をまとめるにあたり、女性リーダーは男性リーダーよりも優れた実績を上げているのかという問いだ。読者にはそれぞれの見解があるだろう。

 偶然にも、新型コロナ感染症がこの世界を襲っている今、政治指導者の性別で国を比較できるだけのサンプルが歴史上初めて十分にそろっている(それ自体が特筆すべきことだ)。

 女性が首脳を務める国・地域にはニュージーランドやノルウェー、スイス、デンマーク、フィンランド、ドイツ、アイスランド、ベルギー(今年の大半)、台湾、スコットランドなどが名を連ねる。統計が示す内容は必ずしも一貫していないものの、示唆に富んでいる。

NZの死亡率は100万分の5

 本紙(英フィナンシャル・タイムズ)は、主に先進国で構成されるOECD(経済協力開発機構)の加盟国を対象に、罹患(りかん)率、検査の実施率、ロックダウン措置の厳格性を考察した。そこから様々なことが分かる。英オックスフォード大学の分析によると、学校閉鎖や旅行制限など新型コロナ感染症対策の厳格さにおいて、リーダーの性差による違いはなかったという。にもかかわらず死亡率は、女性が首脳の国の方が抑えられているように見える。

 ニュージーランドの累積死亡率は100万人当たり5.1人(11月末の時点)で、OECD加盟国において最も少なかった。また、アイスランドとノルウェー、フィンランドでは、この値が100人を大きく下回る。デンマークとドイツは250人未満を維持し、男性が率いる国よりはるかに優秀だ。

 その一方でオランダ、フランス、スウェーデンでは500人を超えている。イタリア、英国、米国では780人を上回り、スペインでは950人に迫った。首脳の性別パターンにおける唯一の例外はベルギーだ。今年9月まで女性が首相を務めていた同国の死亡率は100万人当たり1360人に達する。

 ウイルス検査の実施についても、女性が率いる国の方が徹底している。平均すると、検査244回当たり1人の陽性が認められた(6月時点)。男性が首脳を務める国での値は155だった。

続きを読む 2/2 リーダーに求められる資質

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