中国の沿岸警備隊である海警がその力をますます強めている。他国の軍艦にひけを取らない大型の船艇を配備する。中央軍事委員会の傘下に改編された。さらに、武器使用の拡大や公海の一時封鎖を認める新法を整備し、法的にも権限を拡大する。

<span class="fontBold">南シナ海のスカボロー礁近海を航行する中国海警の船</span>(写真=ロイター/アフロ)
南シナ海のスカボロー礁近海を航行する中国海警の船(写真=ロイター/アフロ)

 中国海警が保有するZhaotou級(NATO=北大西洋条約機構=のコードネーム)は沿岸警備に当たる巡視船にすぎないかもしれない。だが、たやすく打ち負かされる存在ではない。総トン数は1万2000トンで、沿岸警備を目的とする船舶としては世界最大だ。その威容は米国や日本が擁する大半の駆逐艦をしのぐ。広々としたデッキには2台のヘリコプターのほか、76ミリ機関砲など様々な武器を搭載する。

 中国はこのクラスの巡視船を2隻保有しており、そのうち1隻を中国東岸に配備している。最新のCCG 3901(CCGは中国海警=China Coast Guard=の頭文字)は2017年、その担当地域である南シナ海での最初のパトロールに向かった。南シナ海は、中国近海で最も争いの激しい海域だ。中国は超大型の巡視船をこの海域に投入することで、この海域における主張を力で守るとの意思を示している。

 CCG3901は間もなく新たな力を獲得する。中国は今年11月、「海警法」の草案を公表した。同草案は、中国が領有権を主張する岩礁の上に建造された他国の構築物を取り壊したり、外国の船舶に乗り組み、追い払うことを海警に許可するものだ。状況によっては、敵対的な行動を示す船舶に発砲する権限も与える。本誌(英エコノミスト)の今号印刷時点で、パブリックコメントは締め切られている。

海上警備だけでなく力を誇示

 過去10年にわたり、中国近海は領有権を巡る対立や確執に翻弄されてきた。中国は東シナ海では、日本が実効支配する尖閣諸島の周辺海域を巡視している。尖閣諸島は無人の島で、中国も領有権を主張する(中国は同諸島を釣魚島と呼ぶ)。南シナ海では、複数の国が領有権を争っている岩礁を要塞島に一変させた。米国と同盟国は中国の主張に対抗すべく、南シナ海に派遣する軍艦を増やしている。

 世界最大の規模を誇る中国海軍も、この海域における行動をかつてなく活発化させている。そして、同じく世界最大の沿岸警備隊も、この海域における対立においてますます重要な役割を担うようになった。

 中国は13年、複数あった海上の法執行機関を統合して海警局を新設した。その5年後、海警局は人民武装警察部隊(武警)に編入された。武警は、軍の最高機関である中央軍事委員会の指揮下にある。この改編により、海警は事実上、軍隊の一部となった。この体制は米国やインドとほぼ同じである*。

=原文のまま訳した

 造船活動の活発化も海警を支える。海警は今日、500隻を超える船艇を保有している。日本の海上保安庁はこの地域で中国に次ぐ規模であるものの、保有する船艇は373隻で中国に大きく水をあけられている。

 その他の国は、中国のはるか後塵を拝す。台湾は161隻、フィリピンは86隻、インドネシアは41隻という具合だ。

=原文のまま訳した

 中国は船艇の巨大化も進めている。ロンドンを拠点に活動する民間研究機関、国際戦略研究所(IISS)によれば、満載排水量が1500トン(小型の軍艦にほぼ匹敵)を超える船は10年前にはわずか10隻しかなかった。それが15年には51隻になり、今日では87隻を数える。

続きを読む 2/2 海警が持つ最高峰の船は白塗りの軍艦に等

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