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コロナ禍でドイツ自動車メーカーの売り上げに占める中国市場の割合が高まっている。米国新政権と新たな大西洋間パートナーシップの構築に取り組みたいドイツ政府にとっては耳の痛い話だ。だが一方で、ドイツの輸出全体に占める中国の割合は5%にすぎないため、大きな懸念にはならないとの指摘もある。

メルケル独首相は独企業に対し、中国以外のアジア市場を開拓するよう要請した(写真=ロイター/アフロ)

 ドイツの自動車メーカーは自分たちの身に起こった幸運に信じられない思いでいる。10年前の世界金融危機後の深刻な不況から救い出してくれた中国の消費者が、またもや救いの手を差し伸べてくれたのだ。

 自動車大手ダイムラーでは第3四半期に中国の販売台数が前年同期比で23%増加した。「夢みたいな話だ」。10月、ダイムラーのオラ・ケレニウス社長はこうコメントした。新型コロナウイルスの感染拡大により、海外でぜいたくな休暇を過ごすことができなくなった中国の富裕層たちは、代わりに高価な「Sクラス」のメルセデス・ベンツを購入したのだ。

 依然として新型コロナウイルスのパンデミックの影響で低迷を続けている欧米市場の不振を、中国の底堅い需要が打ち消す形となった。その結果、ドイツの自動車メーカーと部品メーカーは深刻な業績悪化を免れた。だがこうした動きは、ドイツの産業界が中国に過度に依存しているとの懸念を再燃させている。

 加えて、ドイツは対中強硬派が勢いを強める欧州連合(EU)と歩調を合わせる形で、バイデン米政権と中国問題に対処するための新たな大西洋間パートナーシップの構築に取り組めるのかという疑問が浮上している。

 中国企業2社が大株主となっているダイムラーは、メルセデス・ベンツの30%近くを中国で販売する。中国市場における売上高はグループ全体の売上高の約11%を占める。

VWの販売台数、4割が中国

 ダイムラー以外にも「中国依存」の強い企業は少なくない。ドイツの代表的な株価指数、DAXに採用されている主要独企業30社の中で、中国市場が売上高の少なくとも20%を占める企業は数社ある。自動車大手BMW、半導体大手インフィニオンテクノロジーズ、プラスチック製品製造大手コベストロなどだ。同じく、自動車大手フォルクスワーゲン(VW)も昨年、中国市場における売上高が同様の割合を占めた。販売台数ベースで見ると同市場の割合が40%近くに達したと推定される。

 独ベルギッシュ・グラートバッハ応用科学大学自動車研究センターの所長を務めるシュテファン・ブラッツェル教授によれば、中国は今や世界で最も重要な自動車市場だ。自動運転や電気自動車に関する技術のテスト市場ともなっている。「しかしながら、ドイツの自動車メーカーが中国市場に依存しすぎていることは気がかりだ」と、ブラッツェル教授は警鐘を鳴らす。

 アンゲラ・メルケル独首相は、西側諸国は貿易と投資に関するやり取りを通じて中国に一定の足かせをはめることはできると固く信じている。そのメルケル首相でさえ、今年10月、輸出先を分散化し、中国以外のアジア市場を開拓するよう、独企業に要請している。

日経ビジネス2020年12月7日号 100~101ページより目次