新型コロナウイルス感染拡大への対応でカナダが健闘している。州政府は州債を発行して、学校と医療機関の雇用を守った。それゆえ、女性たちは仕事に出て行けた。ただし、GDPの回復はそれほど速くない。雇用の確保は非生産的な仕事を存続させる効果もありそうだ。

カナダの回復が速い
●カナダと米国の雇用の変化(前年同月比)
出所:Statistics Canada/Bureau of Labour Statistics/The Economist

 カナダの経済は米国経済との比較でしばしば不本意な評価を受けがちだ。だが最近の実績は米経済に肩を並べる。

 米国と同様に、景況感が大きく改善している。カナダ銀行(中央銀行)は7月、2020年末のGDP(国内総生産)について前年比6.8%減と予測していたが、10月28日にはこの見通しを4.3%減に修正した。

 多くの材料から判断するに、カナダの労働市場は米国を上回るペースで回復しているようだ。TDバンクのエコノミストによると、カナダの9月の雇用は新型コロナウイルスの感染が拡大する前のピーク時に比べて3.7%減のレベルまで盛り返した。これに対し、米国では同7.1%減の水準が続く。

 だがGDPにおいて、春の低迷期からのV字回復を果たすという意味では、カナダは米国に追いついていない。その理由は、カナダでは(欧州と同じく)多くの雇用が依然として政府に支えられているからかもしれない。

 この春、カナダは厳重なロックダウン(都市封鎖)を実施し、GDPは11%を超える大きな落ち込みを記録した(米国は約9%減)。だがその後GDPが回復するにあたり、カナダにはいくつかの強みがあった。新型コロナウイルスの感染をコントロールするのに比較的成功を収めてきた。

州政府が大きな役割

 カナダの州は財政赤字が認められている。この点、米国の多くの州とは環境が異なる。カナダの州政府は新型コロナウイルス感染のパンデミック(世界的大流行)の間、自らの借り入れ能力を生かして教師と医療従事者の雇用を拡大した。

=原文のまま訳した

 2019会計年度に180億カナダドル(約1兆4600億円)だった州政府の総赤字額は、今会計年度末には960億カナダドル(約7兆7800億円)に拡大する見通しだ。この金額はGDPの4.5%に相当する。一方、米国の州政府は税収が減少しているため支出の削減を余儀なくされている。

 米ワシントンでは州を救済すべきか否かで意見が分かれ、景気刺激のための財政出動第2弾がなかなか可決されずにいる。これに対してカナダは、普段は対立している連邦政府と州政府が当面の協力体制を敷いた。連邦政府は、学校を再開したり、膨れ上がった医療コストを補塡したりするための資金として210億カナダドル(約1兆7000億円)を州政府に追加給付した。

 州人口が最も多いオンタリオ州のダグ・フォード首相 (保守党)は8月、連邦政府のジャスティン・トルドー首相(自由党)を「首相として素晴らしい仕事をしている」と称賛した。

 カナダは国全体で、GDPの16%を経済刺激策に充てている。この値は、巨額の経済支援策に取り組む米国の14%を上回る。野党・保守党の党首に最近選出されたエリン・オトゥール氏は「赤字は好まないが、それ以外の選択肢はさらにひどいものだった」と発言している。

 カナダでは教育と医療が拡張されたことで、女性たちが救われた。これらの業界では労働力の大半を女性が占めている。新型コロナ禍で真っ先に仕事を休まざるを得なかった母親たちは、9月に入って学校や託児所が完全に再開されると仕事に復帰した。

続きを読む 2/2 GDPの戻りは米国に遅れる

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