インドの不動産業界が苦境にあえいでいる。2010年代前半は住宅バブルに沸いた。しかし、新たな規制やノンバンクの破綻を機にこれがはじけた。新型コロナ危機の影響で商業用不動産への打撃は大きい。だが、これを好機とみる投資家も現れ始めた。

<span class="fontBold">2015年のグレーターノイダ。不動産ブームに沸いていた</span>(写真=ZUMAPRESS/アフロ)
2015年のグレーターノイダ。不動産ブームに沸いていた(写真=ZUMAPRESS/アフロ)

 インドの首都ニューデリー近郊にグレーターノイダと呼ばれる地域が無秩序に広がる。ここに至るハイウエー沿いに、未完成のまま工事が中断されたマンション群が何kmにもわたって続いている。空っぽの建物が立ち並ぶこの光景は不動産不況の証しだ。インドでは新型コロナウイルス感染のパンデミック(世界的大流行)が、不動産不況の長期化に拍車をかけている。

 ビノッド・クマールさんは、道端にしゃがみ込んでその日の仕事にありつけるのを待つ200人ほどの建設作業員の一人だ。クマールさんによれば、数百棟のビルが未完成のまま放置されているという。彼のような日雇い労働者は、新型コロナ危機が発生する前には月に20日の仕事があったが、今は15日しか仕事がない。

 「賃金は下がるばかりだ」。黒いマスクをし、色あせた茶色のシャツを着たクマールさんはこう嘆く。「仕事に出かけても手ぶらで帰ってくるしかない」

 建設作業員が苦境に追い込まれているのは、インドの不動産デベロッパーが深刻な不況に見舞われているからだ。業界は融資バブルに浮かれ、大規模な借り入れに走ったが、バブルは5年前にはじけた。その余波を受け、インドの金融セクターは危機に陥った。

 コタク・インスティチューショナル・エクイティーズの投資調査担当者は最近のリポートで次のように指摘した。インドでは今日、相当数のマンションが宙ぶらりの状態にあり、建設途上のまま竣工にこぎ着けることができていない。こうしたマンションは金額にして2.8兆ルピー(約4兆円)の規模に膨れ上がった。それに伴い、1.2兆ルピー(約1兆7000億円)に上る融資の返済が危うくなっている。

住宅バブルの拡大と崩壊

 インドの不動産業界が直面する混乱は、何年も前から下地ができていた。インドは10年前、経済成長が最も速い経済大国の一角をなしていた。不動産デベロッパーはノンバンクやプライベートエクイティ企業から建設資金を借り入れ、勃興する中産階級のニーズに応える建設プロジェクトを次々に発進させた。

 多くのマンションが、完成する前に住宅購入者に販売された。こうした「オフプラン」でのマンション販売がピークに達した2010~13年には、毎年40万~45万戸の新築住宅が供給された。これは、その5年前の規模の3倍超に当たる。この結果、前例のない水準の在庫が積み上がった。

 やがて幾つかの出来事が重なってバブルは崩壊。デベロッパーの財務は深刻な圧力にさらされた。その一部は「オフプラン」で家を買った購入者が既に代金を支払っているにもかかわらず、プロジェクトを完成させられない事態に陥った。

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