新型コロナ危機が収束しない中、ホテルが宿泊用の部屋を“仕事部屋”として貸し出し始めた。ただし、このサービスが定着するかどうかは未知数だ。都心の高級ホテルは高価だし、移動が必要。自宅に近いホテルでも孤独が募る。結局、自宅を選ぶかもしれない。

<span class="fontBold">ホットデスクを採用したシェアオフィスの光景</span>(写真=ロイター/アフロ)
ホットデスクを採用したシェアオフィスの光景(写真=ロイター/アフロ)

 仕事に追われていた彼女がふとノートパソコンの時計を見ると、もう午後の1時前だった。昼食をとらないと。そこで彼女は受話器を取り上げ、ルームサービスを注文する。20分もすると温かい食事が運ばれてくる。ここでは料理や皿洗いを気にする必要はない。

 こんな光景を「いいな」と思った人は、現在多くのホテルチェーンが顧客を獲得しようと取り組むサービスを近々使うことになるかもしれない。宿泊用の部屋を仕事スペースとして貸し出すものだ。

 これは、ある程度の理にかなったアイデアといえる。 新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)を受け、ホテルには客が来ない。その一方で、来る日も来る日も自宅のキッチンテーブルで仕事をするのは耐えられない、退屈だ、というテレワーカーもいるだろう。

 大手ホテルチェーンはこの市場の規模がいかほどか試そうと、こぞってサービス提供に乗り出している。米ヒルトンは「ワークスペース」と名づけた新サービスを米国、英国、カナダで立ち上げた。顧客はホテルのスポーツジムやプールを利用できるほか、自転車も無料で借りられる。

 米ウィンダム・ワールドワイドは米カリフォルニア州、フロリダ州、サウスカロライナ州のホテルでビジネスパーソン向けのパッケージを提供する。

 ホテル業界はこれまで出張者や各種会議、チームの集まりなどに対応することでビジネス顧客から多額の収益を上げてきた。ノートパソコンを持ち歩くビジネスパーソンに訴求するには良質のWi-Fi(無線LAN)設備が必要であることも以前から認識している。

 だが、机に向かって1人で仕事をする層に向けて、宿泊用の部屋を日決めで貸し出すことは考えてこなかった。

高級ホテルのスイートでお仕事

 筆者はこのコラム記事の一部を、英ロンドンのウェストエンド地域の中心に立つ高級ホテル、ソフィテル・セント・ジェームズの一室で書いた。1日299ポンド(約4万円)の料金を支払うことのできる人にとっては文句なしに素晴らしい“隠れ場所”だ。50ポンド(約7000円)を追加すれば朝食、昼食、カクテルもつけられる。

 筆者が使ったスイートルームはラウンジに机とプリンター、シュレッダーが備わっており、4人掛けのテーブル、座り心地のよい椅子2脚、ソファというしつらえだった。ペンが数本とセロハンテープ、ハサミ、ホチキスが置いてあったのも、気が利いている。

 ホテルのスタッフは皆マスクを着用し、安全な距離を保っていた。部屋の中は静寂そのもので、集中するにはまたとない場所だった。

続きを読む 2/2 郊外のホテルなら移動不要だが

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