中国で、従来なら次の最高責任者が固まる重要な会議が行われたが、候補者は選ばれなかった。これは、習近平氏が2022年以降も権力の座にとどまり続けることを意味する。次期トップも、次期首相も明確でない状況は、中国政治の未来を確実にするものではない。

習近平氏は10年前の五中全会で次期トップに内定した(写真=新華社/アフロ)

 今からちょうど10年前、中国は、いかにもこの国らしい遠回りな方法で次の指導者を明らかにした。中国共産党中央軍事委員会の副主席に習近平(シー・ジンピン)氏を選んだのだ。習氏は、この少し前まではあまり知られていない存在で、国民的歌手である妻のほうがはるかに知名度が高かった。

 案の定、習氏はその2年後に党と軍を掌握し、中国において毛沢東以来の強力な指導者となった。こうした前例に従うなら、10月26~29日に北京で開催された共産党の幹部が集う第19期中央委員会第5回全体会議(五中全会)で、習近平国家主席の後継者について手がかりが見えてもおかしくなかった。しかし、会議はこの手がかりを一切示さなかった。

 これは意外なことではない。中国の憲法が2018年に改正され、国家主席の任期を2期10年までとする制限が撤廃された時点で、習近平国家主席がこの任期を終えても退任する意思がないことは明らかになっていたからだ。

 一方、共産党トップの地位(編集部注:総書記)に任期の制限はない。しかし、前任者である胡錦濤(フー・ジンタオ)氏は、党の役職と国の役職からほぼ同時に退いた。習近平国家主席も胡錦濤氏の例に倣うと予想されていた。

 習近平国家主席が10年を超えても退任する意思がないことを今なお疑う人のために言うと、今回の五中全会も、習近平氏が最高指導者に就任する前触れとなった10年の会議と同じくらい明白な手がかりを残している。

軍事委副主席が次期トップ

 会議では、党中央委員会の委員など約370人が4日間にわたり話し合い、最終日の29日にコミュニケを発表した。次期5カ年経済計画と35年までの発展の青写真についての「提案」を承認したという(本誌=英エコノミストの今号印刷時点で、計画の全面的な詳細は公表されていない)。発表の中に、党中央軍委に新たな文民幹部を指名する人事に関する言及はなかった。

 将来の指導者が引き継ぎ前に就く役職として、党中央軍委副主席のポストは重要だ。胡錦濤氏も党総書記になる3年前にこの役職に就いた。軍の指揮系統がどのように機能するかについて経験していなければ、党の指導者として軍を掌握することは難しいだろう。

 現在の党中央軍委には、制服組の副主席が2人いる。しかし文民の副主席は不在のままだ。22年に開催される第20回党大会(中国共産党全国代表大会)までに軍統治のコツを学び始めるタイムリミットはもう来ている。すなわち、中国の次期指導者となるべき者は存在しないということだ。

続きを読む 2/2 次期首相の候補もいない

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