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トランプ政権の4年間を振り返ると、外交面では、その公約をかなり果たしている。トランプ外交は、悪党さながらにみなされることもあるが、その本質は有権者を代弁するものだ。トランプ大統領の再選は米国の民主主義にとって悲劇だが、従来外交の復活を喜ぶわけにもいかない。

H.R.マクマスター氏(右)は、常識的な外交安全保障観の持ち主とされるが……(写真=AFP/アフロ)

 11月3日に予定される米大統領選挙で、ドナルド・トランプ現大統領が勝つか負けるかについては、少しの間忘れていただきたい。ここではトランプ大統領が再選するための最善のシナリオがどんなものかを考えてみようと思う。

 トランプ大統領が公約を実現したかどうかをまとめたチェックリストで、最も多く○がつくのは外交政策だ。同氏は新たな戦争を始めていない。アフガニスタンと中東では駐留部隊を縮小した。領土を失った過激派組織「イスラム国」(IS)を急襲し、指導者を亡き者にした。同盟国に対しては、米国がもはや彼らの安全を保障することのない世界について考えさせた。

 こうした中で、最も特筆すべきは、世界の大国が対立するこの世界で、中国が最大の脅威であると特定したことである。

 これらの指摘のいずれか、もしくは全てに同意できない人がいるかもしれない。だが2016年の大統領選でトランプ氏は、果たす気もない公約を掲げていたと主張するのは難しい。確かに国内政策では実現にほど遠いものが多い。メキシコに費用を負担させて国境に壁を建設する案件や、大規模なインフラ整備計画などはその最たる例だ。

 しかしながら、こと外交政策に関しては約束をおおむね果たしている。ここで問われるのは、国際社会を相手にトランプ大統領がしばしば仕掛けた無茶な行動が、擁護に値する実績と言えるかどうかだ。同大統領に反発する人々はバッサリと否定したいところだろうが、その答えは思った以上に微妙である。

有権者を代弁

 トランプ大統領が自らの行動を正当化するのに使う究極の表現は、「これは有権者が望んでいること」だ。同大統領は2年前、NATO(北大西洋条約機構)がモンテネグロを防衛する義務を疑問視した(米国人の大半は地図上でモンテネグロを指し示すことができない)。

 これに対してワシントンのエスタブリッシュメントは怒りを隠すことができなかった。だがトランプ大統領は米中部で暮らす人々の感情を代弁したにすぎない。

 NATOを解体するなどは無謀な話だ。けれども、米国から遠く離れた国をめぐって勃発しうる“第3次世界大戦”のリスクを米国が負うべきかという議論は、何らばかげたものではない。

 また、米軍をアフガニスタンから撤退させるのも理不尽ではない。米軍が駐留して19年が経過した今、トランプ大統領はこれをゼロにすると約束している(現在は4500人)。

 トランプ政権で大統領補佐官(国家安全保障担当)を務めたH.R.マクマスター氏は10月後半、今日におけるアフガニスタンからの米軍撤退を、1938年のミュンヘン協定になぞらえた。これは、英仏独伊による首脳会談ののち、ドイツのアドルフ・ヒトラーへの宥和政策として、チェコスロバキアのズデーテン地方をドイツへ割譲すると決めた協定だ。

 これは行き過ぎた比喩だ。それゆえ、オバマ政権の高官は、ワシントンの外交エスタブリッシュメントを「ブロブ(Blob=能なし)」と呼んだ。