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米テスラが米ネバダ州でリチウム鉱床を取得した。既存のリチウム生産者は、“得意先”の一変にさぞ驚いたことだろう。テスラの生産拡大計画が背景にある。テスラの真意は何か。既存生産者へのてこ入れ、中国に依存しない生産網づくりなどの見方が錯綜(さくそう)する。

電気自動車の低価格化と生産拡大が電池とリチウムの需要を増大させる(写真=ロイター/アフロ)

 米テスラは9月、米カリフォルニア州パロアルトにある本社の屋外駐車場で「バッテリーデー」を開催した。ソーシャルディスタンスを保ちながら開催されたこのイベントには、リチウム化合物などを製造・販売する米大手2社、ライベントとアルベマールの経営幹部が招待された。

 それぞれに割り当てられた「モデル3」に乗り込み、車内に設置された画面に映るイーロン・マスク氏を見守っていた両社の経営陣は、同氏から爆弾発言を聞かされた。電気自動車を開発・製造するテスラが両社のライバルになるというのだ。

 マスク氏によれば、テスラは米ネバダ州にある1万エーカーのリチウム粘土鉱床を取得した。同社はここで塩化ナトリウム(食卓塩)を使ってリチウムを抽出する計画だ。米テキサス州の新工場に供給するためのリチウム精錬工場も建設する。

 「バッテリーデー」の翌日、ライベントとアルベマールの株価は暴落し、両社合わせて17億ドル(約1780億円)の価値を失った。

 だが、テスラが既存のリチウム生産者に深刻な脅威を与えるかどうかについて、業界関係者や観測筋は依然として懐疑的だ。彼らによれば、テスラの計画がここ数年のうちに実を結ぶ可能性は小さい。今回の発表は、大手5社による寡占状態にあるこの業界に生産拡大圧力をかけるためとの見方が強い。