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11月の大統領選をバイデン氏が制すれば、米国と欧州のESG投資をめぐる温度差が解消されるとの見方がある。政治主導でグリーン投資規則を定める取り組みを進める欧州に対し、トランプ政権下の米国はESGに懐疑的だ。米国と欧州の「分断」は多くの投資家を困惑させているだけに、市場ではバイデン氏の手腕に期待する声が高まる。

バイデン氏率いる民主党が政権を握れば、ESGを重視した政策が進むとの見方が強い(写真=ロイター/アフロ)

 民主党のジョー・バイデン前副大統領が大統領選で勝ったら、どのセクターが株式市場でもてはやされるだろうか。この点が目下、投資家の重大な関心事となっている。米国の世論調査では、バイデン氏がドナルド・トランプ大統領に大差をつけているからだ。

 民主党は追加の財政支出や労働組合の重視、化石燃料からの脱却と、さまざまな政策を実行するとうたっているが、バイデン氏が勝利すれば、確実に大きな恩恵を受けるであろうセクターが1つある。ESG関連だ。理由は民主党が化石燃料の使用に厳しい姿勢で臨む公算が大きいからだけではない。ESG投資や企業の情報開示をめぐる規則が変更される可能性があるからだ。

 政治家にとってこの問題は、フラッキング(シェールオイルやシェールガスを生産するための水圧破砕による坑井掘削。環境負荷が大きいとされる)についての議論ほど盛り上がらないものの、極めて重要な意味を持つ。ESG投資や情報開示に関わる現在の規則が変われば、関連セクターへの資金流入が加速し資産価格が急騰するからだ。

 米資産運用大手、ブラックロックのラリー・フィンクCEO(最高経営責任者)が言うところのモメンタムトレード(ESG投資への急速な盛り上がりを機会にして利益を得る投資)が起こる可能性がある。

 こうした取引が起こり得るのは、トランプ政権下にある米国と欧州のESG投資に対する温度差が広がっているからだ。欧州では規制当局と政府関係者が先を争ってESGにやさしい基準、とりわけ環境を意味する「E」を重視する投資手法を取り入れようとしている。例えば欧州中央銀行(ECB)はグリーンボンド(環境債)に関与することを通じて、資本市場におけるベンチマークを設定している。また英規制当局は、マーク・カーニー前イングランド銀行総裁の支援を得て、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)制度の受け入れに動いている。先般、カーニー氏は数年以内にTCFD開示を義務づけるよう要請した。

二者択一の定義課す欧州

 最も重要な点は、欧州委員会がグリーンアセットを定義するためのタクソノミー(ある経済活動が持続可能かどうかを分類する仕組み)について最終報告書をまとめる段階にあることだ。これに伴って「持続可能な投資と報告を促す世界最初の分類システム」が構築される、とEU(欧州連合)の国連大使、オロフ・スクーグ氏は宣言している。

 この問題について投資家の多くは判断を保留している。その理由はEUタクソノミーが産業界における投資に対して「グリーン」か「ブラウン」かという二者択一の定義を課そうとしていることにある。実際の産業界はむしろブラウンからグリーンに変化する過程にある。

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