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英国のジョンソン政権は、トランプ米大統領の再選を望んでいるようだ。同大統領は英国のEU離脱を支持し、新たな貿易協定にも前向きな姿勢を示してきた。しかし、同大統領が再選すれば、米国の政策に同調するよう強く求めるだろう。英政権は思い違いをしている。

EUを離脱した英国と、大統領選後の米国は、どのように手を握るのか(写真=代表撮影/ロイター/アフロ)

 ドナルド・トランプ氏は米大統領の座を退くことになる、という見方が強まっている。西欧諸国の政府の大半はこれに安堵を覚えるに違いない。だが、英国政府は恐らく別だ。

 英国のボリス・ジョンソン政権は欧州連合(EU)から離脱するメリットを実証しようと必死になっている。そしてトランプ大統領はこれまで、英国の離脱を声高に支持してきた。また、同大統領は英国が離脱した後、大規模な貿易協定を結ぶと約束してもいる。

 これに対して、民主党の大統領候補であるジョー・バイデン氏は、北アイルランド紛争をめぐる和平合意である「ベルファスト合意(聖金曜日合意)」に英国が違反するようなことがあれば貿易協定は結ばないと警告した(ちなみにバイデン氏はアイルランド移民の子孫だ)。同氏のこの発言を、保守党の右派は衝撃と怒りを持って迎えた。

 英国政府や与党である保守党はトランプ大統領の再選をひそかに望んでいるが、その考えは誤った認識に基づくものだ。英国の利益についても、2期目のトランプ政権がどんな姿勢を取るかについても、大きな思い違いをしている。

米政権はさらに威圧的になる

 トランプ大統領の近くで働いたことのある人と話せば、次のような警告が聞けるはずだ。同大統領が新型コロナウイルス感染症を克服して再選した場合、2期目の政権の外交政策は過激さを増したものになる。そして英国に対してさらに威圧的な態度を取るだろう、と。

 イランやイスラエル、中国、気候変動、国際刑事裁判所(ICC)、世界保健機関(WHO)など、扱いが難しいテーマをめぐる米英間の方針のずれは、これ以上容認されなくなる。米国は、英国政府を従わせるために持てる力のすべてを注ぐだろう。

 こうした戦術が垣間見えたのは、英国が整備を進める5Gネットワークに、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の参入を認めるか否かをめぐってトランプ政権とジョンソン政権が対立した時だった。ファーウェイにとって好ましい方針を英国が発表すると、米国はすぐさま機密情報共有の枠組み「ファイブ・アイズ」に基づく情報共有をやめると脅しをかけた。ジョンソン政権は当然、方針を変えた。

 情報共有は、英米の特別な関係における中核部分だ。英国には、米国に狙われかねない弱みが他にも数多くある。