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イランと中国の間で「戦略的パートナーシップ」協定の話し合いが進む。米国の制裁に苦しむイラン経済にとり、中国の支援は命綱となる。だが中国側から見れば対米関係のほうが重要であり、イランは一つの駒にすぎない。

 中国は中東で、ある不思議な力を発揮する。

 経済が破綻し、ハイパーインフレの瀬戸際にあるレバノンの政治家の目には、正しい暗証番号をみつけさえすれば多額の資金を吐き出すATM(現金自動預け払い機)に見える。

 シリアのバッシャール・アル・アサド政権から見ると、中国は崩壊した国を立て直す神に思える。風刺画に描かれることの多い中東だが、今では自身を戯画化しがちだ。

 イランのハッサン・ロウハニ大統領は10月1日、中国との関係が「大きく前進した」と宣言した。両国は数カ月前から、25年に及ぶ「戦略的パートナーシップ」協定の締結に向け話し合いを進めてきた。その詳細はいまだ明らかになっていない。

 リークされた協定案は、道路、港湾、通信、原子力発電とあらゆる分野において、巨額の投資を中国に求めている。中国には恐らくイランの石油産業に関与する権利が与えられ、その結果、イラン産原油および石油製品の市場が確保される。

 一方、インフラ開発プロジェクトにより、イランは中国の一帯一路構想に組み込まれる。イランはアジアと欧州、中東を結ぶ中継点となる。イランのメディアでは、ペルシャ湾に浮かぶ経済特区の島、キーシュ島の管理権を中国に与えるのではとの臆測が流れた。イラン政府はこの噂を否定している。リークされた協定案はこの点に言及していない。

苦境イランに中国が救いの手

 中国が新たな友好国を持つことは、米国政府内に一定の警戒を呼んだ。マイク・ポンペオ国務長官は「中東を不安定なものにする」と警告した。

 しかし、中国の中東外交におけるこれまでの例に漏れず、提示されたイランとの協定案も非常に野心的ではあるが詳細に欠ける。協定案は包括的なロードマップではない。これが示すのはむしろ、イランの必死さと中国の野心にかかる制約だ。