新型コロナ危機で経済が停滞する中でも、住宅価格が上昇している。英国では過去最高のレベルに達した。金融緩和と政府のコロナ対策が原因だ。加えて、在宅勤務の増加と支出の減少が専門職層の購買を促す。この流れは当分変わりそうもない。政府は、安心して住むことができる賃貸住宅の整備を進めるべきだ。

 株式相場がこの9月に大きく伸びることはなかったが、年間を通じて見れば堅調で、今も驚くべき力強さを示している。同じように並外れた勢いを見せているものの、あまり注目されていない別の資産がある。住宅だ。

 多くの富裕国では、新型コロナウイルス感染症の第2波が押し寄せる今も、住宅価格が急騰している。今年の第2四半期にはロックダウンにより経済活動が制限されたにもかかわらず、10カ国の高所得国・中所得国のうち8カ国で住宅価格が上昇した。

新型コロナ危機でも上昇止まらず
●米国の平均住宅価格
<span class="textColTeal fontSizeM">新型コロナ危機でも上昇止まらず<br /><small>●米国の平均住宅価格</small></span>
出所:The Economist

 非公式統計(政府が公表するデータより迅速に提供される。ただし精度は落ちる)によると、米国の住宅価格は1年前より5%値上がりした。ドイツでは11%の上昇。英国は8月、名目値で過去最高を記録した。

 このように住宅価格が急騰した要因の一部は、株式市場の強さを支える要因と重なる。だがそれ以上に、新型コロナ危機が経済に与えた影響を映し出している。住宅価格の高騰は、株価の高騰以上に新型コロナ危機との関連が深いのだ。

 株価の上昇と同様に、金融緩和政策が住宅価格の上昇を後押しする。米国人が期間30年の固定金利で住宅ローンを組む際の利率は、この1年間でおよそ4分の1下がり、約2.9%となった。ローンの金利が低ければ、月々の返済が楽になる。加えて、住宅そのものの魅力も増す。他の安全な投資対象から得られるリターンが相対的に目減りするからだ。

新型コロナの影響は不公平

 その他の経済政策も追い風となっている。政府が世帯を対象に巨額の支援金を給付したため、職を失った労働者が家の売却を迫られる事態が回避できた。時を同じくして、住宅ローンの支払いも猶予となった。英国政府は住宅購入に関わる印紙税を一時的に停止している。

 だが、住宅価格の高騰をもたらしたのは政府の政策だけではない。ここには構造的な力も作用している。

 今年生じた失業は、低賃金のサービス業に従事する人たちに集中している。彼らは住宅を購入して住むより、賃貸物件に暮らすことの方が多い。

 一方、専門職に就き、ロックダウン中も在宅勤務で仕事を続け、支出を削減できた人たちは、大きな買い物ができるほどの現金をため込んだ。家で過ごす時間も増えたことだし、より広い家を買うのに今以上に適切なタイミングがあるだろうか。

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