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銀行の資本力が強化され、世界の中央銀行が資金供給している以上、金融危機は起こらないだろうといわれている。だがコロナ以前より積み上がっている信用リスクの高い企業への貸し付けが、次の危機につながるとの見方もある。資産の過大評価と債務拡大に対する反動が、今後金融市場を不安定化させる可能性がある点には注意が必要だ。

2008年のリーマン・ショックの時と比べて、銀行の資本は積み上がっている(写真=ロイター/アフロ)

 今後、新たな金融危機が起こる確率はどのくらいあるのだろうか。今年9月に英調査会社、オックスフォード・エコノミクスのデータ分析専門家は、グローバル企業162社にこの問いを投げかけた。今後2年間に金融危機が起きる確率は20%というのが、平均的な回答だった。

 この値は、新型コロナウイルス感染拡大の「第2波」が世界を襲う確率の2倍に相当するといわれている。そして残念なことに、新型コロナに有効なワクチンが早期に開発される確率の2倍であるという。

 金融危機が起こるだろうという不安は、すでに社会にさまざまな影響を及ぼしている。オックスフォード・エコノミクスが9月に実施した調査によれば、企業の景況感は実際のデータから割り出される妥当な水準よりも冷え込んでいる。

 「当社の分析は、景況感の大幅な悪化の多くが金融危機に対する不安から生じていることを示唆している」と、調査を担当した首席エコノミストのジェイミー・トンプソン氏は話す。

 投資家はこの調査結果を気にかけているものの、今のところ金融危機が間近に迫っているわけではない。少なくとも2008年のグローバル金融危機のように、連日メディアが書き立てた種類の危機が近々訪れる公算は低い。なぜなら少なくとも2つの要因が、危機に対するリスクを緩和しているからだ。

銀行の財務体質は健全

 第1に、米連邦準備理事会(FRB)はじめ各国の中央銀行が、金融危機当時、欧州中央銀行(ECB)総裁だったマリオ・ドラギ氏の発言を引き合いに出しながら「市場を機能させるためにあらゆる手段を講じる」と明言しているからだ。今年3月、米国債市場が機能不全に陥った際、FRBは異例の資金供給を行った。今年3月のこうした行動が、中央銀行の姿勢を端的に表している。

 第2に、今年の深刻な景気低迷のきっかけを作ったのは銀行ではない。米国や欧州の大半の銀行は、08年当時と比べてはるかに資本力が強化されている。「コロナ禍に見舞われた時、大手米銀の財務体質は極めて健全だった。それだけでなく、FRBは銀行の体力をさらに盤石なものとすべく重要な措置を相次ぎ打ち出した」と、FRB副議長のランダル・クオールズ氏は指摘する。金融データ販売事業を展開する米モーニングスターも次のように説明する。「米金融システムが破綻したり債務超過に陥ったりするリスクは、今回はるかに小さいとみられる」

 だが問題もある。