全3006文字

英ジョンソン政権が、EUと結んだ離脱協定を修正する内容を含む国内法制定を意図している。これは法の支配をないがしろにする行為だ。民主政治と独裁政治を分かつ一線を越えることにもなる。香港における中国の行動を非難できるだろうか。

英国はマグナカルタを定めるなど法の支配をけん引してきた(イラスト=Ingram Pinn)

 欧州連合(EU)からの離脱(Brexit)を実現した後、国際社会においていかなる役割を果たすべきかを模索していた英国のジョンソン政権は、「自由民主主義の旗手」をアピールするようになっていた。同政権の閣僚らは、主要7カ国(G7)に韓国やオーストラリアなどを加えた、新たな「民主主義国家グループ」の招集などに言及している。

 だが、彼らは大事なことを見落としている。民主主義の模範を広めたいなら、「法の支配」を順守する必要がある。

 英国が2016年に国民投票を実施してEUからの離脱を決めた時、EU諸国は大きな衝撃を受けた。各国の首脳は、「英国は実利を重んじる国なのに」と口をそろえた。他の国なら感情に任せて暴走することもあるが、英国民は常に冷静沈着だ。世界で最も安定した民主主義国家を築いた、慎重で抜け目のない英国人が、なぜあのような投票行動をしたのかと。

 9月9日に驚くべきことが再び起こった。