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LVMHが、ティファニーの買収を断念する意向を示した。米国との関税摩擦をめぐる仏政府の対応に協力するため、と説明する。それは本当か。新型コロナ危機で高級品市場がしぼみ、買収金額が見合わなくなったとの見方が交錯する。

LVMHのアルノー会長兼CEO。「カシミヤをまとった狼」の異名を取る(写真=AP/アフロ)

 高級ブランド世界最大手の仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)は2019年11月、米宝飾品大手のティファニーを160億ドル超で買収することで合意したと明らかにした。この一件が、米国とフランスの間で高まる関税摩擦に翻弄されている。LVMHの説明によると、買収の手続きを遅らせるよう仏政府に求められたため手を引かざるを得なくなったという。

 これを受けてティファニーは9月9日にLVMHを提訴。買収の成立を遅らせるべく独禁法で定められた届け出を先送りするなどの戦術を駆使し、時間稼ぎを図ったと訴えている。

 LVMHを率いるベルナール・アルノー会長兼CEO(最高経営責任者)はフランスの大富豪で、強硬な交渉戦術をとることから「カシミヤをまとった狼」の異名を持つ。同氏は数カ月にわたって駆け引きをした末、今回の撤回に至った。

 昨年11月の買収合意は1株135ドルとの条件だった。同氏は、その後発生した新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)がもたらした景気低迷の影響を反映すべく、取引条件を再交渉する道を模索してきた。

 この買収案件は、高級品セクターにおいて最大規模。加えて、新型コロナ危機前に合意に至った取引が、業績の見通しが劇的に悪化する環境においていかに翻弄されるかを示す一例として注目を集めている。

仏外相から交渉遅延の要請

 今後は厳しい訴訟合戦が展開していくとみられる。どちらが勝利するのか、そして買収を成立させるべきか否かについて、米デラウェア州の裁判所が判断を下すことになる。

 LVMHとティファニーの間で衝突が生じたのは9月8日のことだ。