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中国の自動車販売の回復や米テスラの躍進を受け、新興の中国EVメーカーへの投資が活発化している。EVメーカーは政府の補助金半減の影響で不振が続いていたが、厳しい事業環境下で経営体質に磨きがかかった。テスラや既存の自動車メーカーとの競争は厳しいが、グローバル市場を制するチャンスは高まっている。

北京にある上海蔚来汽車(NIO)のショールームはにぎわいを見せている(写真=AP/アフロ)

 世界最大の電気自動車(EV)メーカー、米テスラが躍進する中、中国では投資家が次のテスラを育てようと国内のEV新興企業に数十億ドル(数千億円)を投じている。そのため、この中から大躍進する企業が現れるであろう、絶好のチャンスが広がっている。

 テスラの株価が過去1年間で約900%上昇するという輝かしい実績に加え、世界最大ともいえる中国の自動車市場に回復の兆しが見えていることも、中国のEVメーカーにとっての追い風になっている。

 しかし、一部の経済アナリストは、こうした投資ブームは時期尚早でないかと考えている。中国ではバッテリーへの充電インフラが未整備である点や、テスラと既存の自動車メーカー双方による激しいシェア争いがボトルネックになっているというのだ。

テスラの好調が追い風に

 それでも、中国電子商取引(EC)最大手のアリババ集団が支援する中国のEVメーカー、小鵬汽車は、赤字にもかかわらず15億ドル(約1590億円)を調達した。8月27日に米ニューヨーク証券取引所に上場すると株価は40%以上の値上がりを見せた。また、利益率が改善した理想汽車は、7月にナスダックで11億ドル(約1166億円)を調達し、株価は70%近く上がっている。

 「私がこうした新興メーカーの創設者だったら、(テスラ創設者の)イーロン・マスク氏にお礼の気持ちを込めて早めのクリスマスプレゼントを送っていただろう。これらの企業の経営状態は悪くはなく、むしろ良いくらいだ。しかしテスラの活躍がなかったら、いまだに食べていくのが精いっぱいの状況だったに違いない」と、アジアの自動車市場を専門とするコンサルタント会社のZoZo Goの創設者であるマイケル・ダン氏は語った。

 業界に吹く追い風に助けられたもう一社は上海蔚来汽車(NIO)だ。同社はニューヨーク証券取引所にも上場しているが、1年前、多くのアナリストが存亡の危機と危ぶむほどの勢いで赤字が膨らんでいた。

 しかし、今年4月に国有企業が10億ドル(約1060億円)の資金を注入、第1四半期には再び黒字に転じた。株価はこの1年で550%上昇している。

 同社は8月31日、米国預託株式(ADS)の売却を通じて17億ドル(約1802億円)を調達する計画を発表した。上海蔚来汽車の創設者、李斌氏は北京にある同社の旗艦ショールームにて、最近のキャッシュフロー問題は「最大級の試練」だったと振り返った。会社が倒産するのではないかと懸念したバイヤーたちが、同社製品の購入を延期するほどだったという。

 李氏は、こうした懸念は払拭されたと考えている。「当社の自動車への需要は急速に高まっている。顧客の懸念は解消された」と話す。

 中国のEV市場が安定し、7月には販売が回復の兆候を見せたことも、こうした企業の好況を後押ししている。

日経ビジネス2020年9月14日号 86~87ページより目次