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米国はファーウェイ、バイトダンス、テンセントと中国のテック大手を標的に厳しい措置を発表した。だが中国政府は、中国で事業を営む米国企業に報復的な規制をかけようとはしない。米国企業がもたらす経済的利益と技術革新が中国の産業を発展させるからだ。

米政府は中国IT企業を排除へ(写真=Abaca/アフロ)

 米トランプ政権が中国のテック最大手を標的にしたことで、米国企業が厳しい報復に見舞われるのではとの懸念が生じている。

 ドナルド・トランプ米大統領は8月6日、2つの大統領令に署名をした。中国のスタートアップ企業の中で最も価値の大きい*1北京字節跳動科技(バイトダンス)と、株式時価総額で中国第2位の騰訊控股(テンセント)の事業に打撃を与える大統領令だ。

*1=原文のまま訳した

 さらに17日、米政権は中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)が世界中の供給業者から部品を調達する道を断つ動きに出た。この措置はファーウェイにとり致命的なものになるとの見方がある。

 中国では、国内で事業を行う米国企業に対して同等の規制を発表すべきだとの政治的圧力が高まっている。しかし、中国政府は伝統的に報復には消極的だ。複数のアナリストが、中国政府は今後も慎重な姿勢を続けるだろうと分析する。米国企業が中国にもたらす経済的利益と技術革新を損ないたくないからだ。

 調査会社プレナムのアナリスト、ショーン・ディン氏は「中国政府が(米国が中国企業に科す措置と)戦うための重要な手法として、外国企業と投資家を中国に引き留めておくという方策がある」と指摘する。

 中国政府は2019年3月、中国の国益を損なってきた「信頼できない企業リスト」を作成する予定だと発表した。それ以降、外国企業を本格的に標的にするとの中国の姿勢に対して投資家は不満を漏らしてきた。しかし、今もそのリストは作成しておらず、処罰を下した例もない。

日経ビジネス2020年8月31日号 92~93ページより目次