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新型コロナ危機がもたらした観光業の失速が、次なる危機の起点となる恐れが指摘される。米国では観光業だけで1700万人が失業の危機にさらされている。これが不動産、消費、行政サービスに波及しかねない。大恐慌の起点となった穀物価格の下落をほうふつさせる。

新型コロナ危機の影響で閑散とする空港(写真=AP/アフロ)

 2019年の今ごろ、筆者は投資管理会社AGビセットのウルフ・リンダールCEO(最高経営責任者)にインタビューした。当時は、過去10年の間に空前の規模に膨れ上がった企業債務バブルがはじければ、経済が急激に悪化しかねないとの懸念が高まっていた。

 リンダール氏はその時、経済の混乱は世界の観光業界を起点に広がるのではないか、という斬新な見方を語った。「休暇中には誰もが旅行に行く。だが車や電話と異なり、旅行は直ちに切り詰めることができる」

 同氏は、不測の経済ショックのために人々が旅行を控えたならば、その影響は製造業、不動産、レストラン、高級品、金融サービスなどあらゆる産業に及ぶと考えていた。そうなれば多くの企業が倒産し、失業率が跳ね上がって経済が急速に低迷する恐れがある。

 リンダール氏の主張に同意する人は数多くいたかもしれない。だが私たちが現在直面している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的流行)を予測できた人は皆無だっただろう。

 このパンデミックに起因する世界の観光業の落ち込みは、次なるステージを導くものと思われる。公衆衛生が非常事態に陥り大量失業が発生する局面から、多種多様な産業において企業の破綻が拡大する局面へと事態が進行する。世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)は、観光産業は世界のGDP(国内総生産)の10%以上を占めると推計している。

不動産取引高は68%減少

 この夏に外国旅行をする人がわずかとなることで最も深刻な打撃を受けるのはイタリアやメキシコ、スペインといった国々だ。これらの国々の観光産業がGDPに占める割合は世界でトップレベルにある。だが、今年4~6月期に戦後最大のGDP減少幅を記録したばかりの米国こそ恐らく混乱の中心となるだろう。

 米国では追加の景気刺激策をめぐって議会が合意に達しない中で、感染者数が激増している。観光業の低迷が及ぼす影響だけを見ても、1700万近い人が失業の危機にさらされている。また、数えきれないほどの企業の存続が