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新型コロナウイルスの感染拡大が収束に向かえば、移民の受け入れ問題が再び浮上するだろう。外国人は感染をもたらす、移民は雇用を奪う、との懸念が広がる。しかし、いずれも根拠のある話ではない。移民排除はむしろ国を貧しくする処方箋だ。

カナダに渡った中国人が消費を押し上げている(写真=ロイター/アフロ)

 新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)が始まって以降、世界のすべての国が国を閉ざした。もしくは国境の一部を閉鎖した。世界中の政府が発令した移動規制は合計で6万5000件を超える。国境を管理することで一部の地域、特に島しょでは、新型コロナウイルスに対処するための貴重な時間を稼ぐことができた。

 だが世界規模で移動制限をかけるのにかかったコストは巨額だ。数十億件の旅行がキャンセルされたことで、何百万もの雇用が失われ、生活が打撃を受け、夢が先延ばしされた。例えば銀行員や旅行客がアラブ首長国連邦(UAE)への渡航を相次いで中止したため、同国のホテルでベッドを整え、スープをかき混ぜていた移民がレイオフされた。

 職に就いていない外国人はペルシャ湾岸地域から退去するよう求められているが、多くの外国人はそれもできない。ほとんどの航空便がキャンセルされているからだ。

 世界全体で何千万人もの移民が困難な状況に追い込まれ、貯蓄を食い潰す以外になくなっている。この貯蓄は家族を貧困から救い出し、子供を学校に通わせるために蓄えていたものだ。物乞いをせざるを得ず、逮捕された者さえいる。UAEでは物乞いは犯罪だ。

 移民政策は目下のところ、どの国においても最優先課題というには程遠い。新型コロナが依然として猛威を振るう中、しばらくの間、日常は戻ってこないだろう。だが政府は早晩、重要な問題への取り組みを迫られる。多くの国が観光やビジネスで国を訪れる人々に対し、段階的かつ断続的に国境を開いていくことになる。その時、同じように移民も歓迎するのかという問題だ。

感染拡大と雇用喪失をもたらす

 ワクチンが開発されパンデミックが収束しても、各国が外国人の受け入れに消極的になるかもしれない。これは、一つには感情的な理由からだ。人々は不安なのだ。今回の感染拡大だけでなく、次の感染拡大に対しても不安を抱いている。

 外国人と感染拡大との間に相関関係があると考える人は数多い(新型コロナに感染した移民が大勢乗る船が地中海を渡ってくる、といった扇情的なニュースがこうした印象をあおっている可能性がある)。

 多くの国で中国人と見える人々が嫌がらせを受けたり、アフリカ系に見える人が中国で差別されたりしているのは、