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パンデミックの最中、美術品やリゾート地の土地の値段が高騰するなど、高額品消費が堅調な動きを見せている。コロナ禍で世界の中央銀行が金融緩和を実施したことで、資産価格が上がり、富裕層の消費が活発化した。一部の資産家がさらに富み、労働者の賃金は上がらない状況がさらに進むと、専門家は危惧している。

コロナ禍で需要が落ち込むと、英クリスティーズ等のオークション会社は当初、身構えていた(写真=ユニフォトプレス)

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。こうした状況にある今は、目が飛び出るほど高価な価格が付くことを期待して、トレーナーをオークションにかけるのに適した時期とは言えないだろう。今年、世界経済が5%のマイナス成長と予測されているのであれば、なおさらだ。

 だが7月末、オークション大手の英クリスティーズはマイケル・ジョーダン氏が使用していたバスケットシューズを1ダースほど、ネットオークションにかける予定だ。最も高価なシューズは35万~55万ドル(約3700万~5840万円)の値が付くと予想されている。これに先立ち、今年5月に米サザビーズが開催したネットオークションでは、同じくマイケル・ジョーダン氏が試合で使用したナイキのエアジョーダン1が56万ドル(約5900万円)で落札された。中古スニーカーの落札額としては過去最高額であり、億万長者でさえ、めまいがするような値段だ。

 マイケル・ジョーダン氏のバスケットシューズにこれほど高額な落札価格が予想されている背景には、特殊な要因もある。今年、米スポーツ専門局ESPNでドキュメンタリー番組『マイケル・ジョーダン:ラストダンス』が公開され、ジョーダン人気が再燃していることも関係している。だがそれだけではない。落札予想価格の高騰はもっと大きなトレンドを象徴している。コロナ禍が世界経済に大きな打撃を与える中、一部の高額品市場が依然にぎわっていることだ。

 資産価格の値上がりはまさに予測不可能であり、正確に見通すのは難しい。高額品セクターは情報が公にされないものも多く、同市場の動向を推し量ることはこれまた簡単ではない。消費者のお金の使い道も多様化しており、マネーは新しい分野にも流れ込んでいる。

 スイスのリシュモンや仏シャネルなど、従来からある高級小売企業は今年、業績悪化を明らかにしていた。だがここにきて、欧米の一部地域では売り上げが急回復していると伝えられている。英コーンウォールや米ハンプトンなどの高級リゾート地では地価が急騰している。高級ワインのオンライン販売は目立たないが売り上げが急増している。

オークション大手の「驚き」

 こうした傾向の一端は金持ちの豪勢な巣ごもり消費を反映しているのかもしれないが、美術品をめぐるトレンドはとりわけ目を引く。新型コロナウイルスのパンデミックが広がるまで、オークション大手は大規模なネットオークションを開催しようとはしなかった。特別な人だけが参加する絢爛(けんらん)たる夕べの集いを、サイバー空間で再現することなど不可能だと考えたからだ。したがって新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた当初、これらのオークション大手は人員を削減し、給料を減らして、長期にわたり需要が落ち込む事態に備えた。

 だが6月、サザビーズはオンラインオークションで初めての試みを行った。