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フェイスブックは2021年1月から、従業員が住む場所の生活コストに応じて、給与の額を増減させる考えだ。同一の成果を上げているにもかかわらず、住む場所によって報酬が変わるのは公正か、意見は分かれる。英国で行われたある調査では、半数が「公正」と評価した。

フェイスブックは、これまでも市場の状況に応じて給与額を定めてきたと説明する(写真=左:ロイター/アフロ、右:AP/アフロ)

 米フェイスブックは今年5月、従業員の最大半数が今後5~10年のうちに在宅勤務になるだろうとの見通しを明らかにした。これには一つ注意事項がある。従業員の給与が、それぞれの住む地域の生活コストに応じて調整される可能性があるのだ。

 暮らしにお金のかかる米カリフォルニア州パロアルト(編集部注:フェイスブックが主要拠点としてきた)や世界各地の主要都市を離れる従業員は給与がカットされる場合がある。

 マーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)は動画を通じて、来年1月からこの措置を実施するとのメッセージを従業員に伝えた。同CEOは「1月の時点で、居住する地域に合わせて給与額を調整する……虚偽の申告をした人には厳しい措置が下されるだろう」とくぎを刺した。

 米ビジネス対話アプリ大手スラック・テクノロジーズも、同様の措置を進める意向を明らかにしている。一方、同じくカリフォルニア州に本拠を置くツイッターや、米モバイル決済大手スクエアは、フェイスブックの動きに続くかどうか明言していない。各社がコスト削減を模索する中、ソーシャルメディアの巨人フェイスブックはテック業界の新たな慣例を設定したのだろうか。

同一成果なら同一報酬

 米マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院で米雇用政策などを研究するトーマス・コーカン教授は、フェイスブックの措置に疑問を呈する。「生活コストが安い地域に住んでいるから安い給与しか払わないというのは、危険な論理だ」。同教授はスローン仕事・雇用研究所の共同所長も務める。

 テクノロジー関連の教科書を出版する米オライリーのローラ・ボールドウィン社長も同じ考えだ。「例えば、あるエンジニアリング・チームに属すスタッフすべてに同じ結果や成果を期待したとしよう。同等の価値を生み出したスタッフの1人に、安い給与しか支払わないということはできない」。同社長はこう続ける。「同じ成果が望めるなら、チームがカリフォルニア州に住んでいようとユタ州に住んでいようと問題となるだろうか」

 米国では地域による給与格差が大きく広がっているとみられる。2018年の国勢調査によれば、世帯所得の中央値はカリフォルニア州で推定7万5000ドルだった。これに対し、隣接するネバダ州は5万8700ドル、中西部ミズーリ州は5万4500ドルだった。カリフォルニア州の中も一様ではない。サンフランシスコの中央値が10万7900ドルだったのに対し、ロサンゼルスは7万2600ドルにとどまった。

 フェイスブックは、フルタイムの従業員を世界全体で5万人近く雇用している。今回の措置は現在の労働慣行の延長にすぎないという。

 同社の広報担当者は次のように語る。「わが社は常に、報酬において市場環境に応じたアプローチを取ってきた。事業拠点を置く地域の一般的な給与水準に沿って報酬額を決める。わが社は長い間こうした方法を採用してきており、現在の報酬制度となっている。この制度はすべての従業員に適用される。リモートワークをする従業員も例外ではない」

日経ビジネス2020年7月20日・27日号 114~115ページより目次