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新型コロナ危機からの経済回復が当初予想されたようなV字になるかどうかは、各国の状況次第だ。ロックダウンの期間と厳しさ、政府からの給付金の多寡、消費者心理などが影響する。だが、消費者心理は感染状況を反映して容易に揺れ動く。今後の回復は全く見通せない。

ソーシャルディスタンスを保とうと思えば、テーブル数を減らさざるを得ない(写真=ロイター/アフロ)

 英国の東岸に位置する岬、オーフォード・ネスは、20世紀に軍事技術の実験場として使われた跡地だ。海岸に今も残るパゴダと呼ばれる巨大建造物は、爆発に伴う衝撃が周辺の湿地に悪影響を及ぼさないよう設計された。

 7月4日、オーフォードの町は別の種類の爆発に備え身構えていた。「スーパーサタデー」と呼ばれたこの日、新型コロナウイルスの感染対策として英国がロックダウンを導入して以来初めて、パブとレストランが営業を再開したのだ。

 ところが、オーフォードのビール爆弾は不発に終わった。埠頭に近いパブ「ジョリー・セイラー」の屋外テーブルには客の姿が数えるほどしか見当たらなかった。

 同じ状況は英国中で見られた。レストランの予約は1年前と比べて90%減にとどまっている。

 ジョリー・セイラーの惨状は、先進諸国がロックダウン解除後に直面する困難を暗示する。大方の経済予測では、先進国経済は2020年上半期に急落した後、21年以降のどこかの時点で危機前の水準に戻るとされている。しかし、各国の回復具合はそれぞれ異なるだろう。

政府の対策が経済回復を導く

 ドイツや韓国など一部の先進国は、いわゆる「V字」回復を成し遂げる可能性が最も高いとみられる。その他の地域のGDP(国内総生産)は、むしろ「L字」や「W字」で推移しそうだ。

 本誌(英エコノミスト)がリアルタイムの人の移動データを分析したところ、経済の回復は容易につまずく可能性があることがはっきりした。消費者が新たな感染拡大の可能性に敏感に反応するためだ。

 国によっては、ロックダウンを実施し始めた2月以降の経済の落ち込みが激しく、比較的大きな困難を抱えるところもあるだろう。今のところ、それぞれの国の行く末について確かなことは分からない。今年4~6月期のGDPの数字はまだ発表されていないが、いずれにせよ、速報値は後に大幅に修正されると思われる。景気が後退局面にある時にはよくあることだ。

 そんな中で、産業構造は一つの目安になる。ドイツの経済活動調査を見ると、同国は3~5月、フランス、イタリア、スペインに比べてうまく持ちこたえたようだ。これは、製造業への依存度が高いためと考えられる。製造業は、例えば小売業や接客サービス業よりも、生産の維持とソーシャルディスタンスを両立しやすい。

 英コンサルティング会社キャピタル・エコノミクスの予測では、今年のGDPの縮小が欧州で最も小幅になりそうな国はポーランドだという。理由の一つは、この国が海外からの観光客にほとんど頼っていないことだ。

日経ビジネス2020年7月20日・27日号 110~111ページより目次