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米国のシェール革命を主導した米チェサピーク・エナジーが連邦破産法11条の適用を申請した。自社の事業モデルに自信を持ちすぎ、シェールガスからオイルへの転換に乗り遅れたことが要因の一つだ。だが、その過剰な自信こそが米国のエネルギー状況を一変させる力となったことを忘れてはならない。

チェサピークの負債は90億ドルに及ぶ(写真=AP/アフロ)

 石油と天然ガスの採掘は、人間と機械が自然に挑む行為だ。米国のシェール層の採掘地域において、挑むべき自然とは、地下数千mの深さに横たわる、炭化水素を豊富に含む岩盤だ。こうした岩盤を見つけるのは地質学者の仕事。その岩盤に対して「水圧破砕」を行うのはエンジニアの仕事となる。

 水圧破砕とは、水と化学物質と掘削技術を適切に組み合わせて、岩盤から石油やガスを取り出す技術のことだ。岩盤に十分な時間、十分な圧力をかけ続ければ、いずれ大きな見返りが得られる、というのが基本的な考え方。米国では2000年代後半に、この水圧破砕法を用いたシェール革命が始まった。

 石油と天然ガスの生産を巡るこの大変革の道を切り開いたのは、米チェサピーク・エナジーだ。オクラホマ州出身の2人、トム・ウォード氏と故オーブリー・マクレンドン氏が創業した。両氏の生業は、地質学者でもエンジニアでもなく「ランドマン」だった。ランドマンの仕事は大きく2つ。一つは土地の所有者から採掘権を獲得すること。もう一つは、十分な数の油井を掘れば天然ガスをはじめとする大量の地下資源を取り出せると、投資家を説得することである。

コスト構造の転換に遅れ

 2人は大成功を収めた。チェサピークは00年代、エネルギー界の米グーグルと目された。同社と採掘権のリース契約を結んだ米国の土地所有者は100万人に達した。同社は、この新たな形の天然ガス生産で米国最大手となった。

 だが、それも昔話だ。20年6月28日、かつて強大な力を振るったこの会社が、連邦破産法11条の適用を申請した。90億ドル(約9700億円)近い債務の償還資金を手当てできなくなったという。英コンサルティング会社ウッド・マッケンジーのロバート・クラーク氏は、同社が保有する資産は詰まるところ規模こそ大きいが質が悪く、低エネルギー価格の時代に適応できなかったのだと説明する。