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低価格を武器に急成長した2015年創立の新興EC、ピンドウドウの株価はこの3カ月、130%上昇した。だが、顧客を引き付ける惜しみない販促策によりその収益は食いつぶされ、足元は利益を出せない状態だ。急速に伸びる流通取引総額の信ぴょう性や、ガバナンス不全といった問題点も指摘され始めている。

ピンドウドウは、複数人で同じ商品を共同購入すれば、大幅に値引きされる(写真=アフロ)

 時価総額では世界有数の規模を誇るも、4半期決算で一度も利益が出ていない企業が株式市場をにぎわしている。

 「中国のネット通販市場を作り変える」とのフレーズを合言葉に急成長を見せる拼多多(ピンドウドウ)の株価は、この3カ月で130%上昇した。その時価総額は1010億ドル(約10兆8070億円)に達し、米ウーバーやソニーをも上回る。そして中国インターネット大手の百度(バイドゥ)や、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業傘下の富士康科技集団(フォックスコン)の2倍に及ぶ規模だ。

 同社の創業者で最高経営責任者(CEO)の黄崢(コリン・ファン)氏は今や、中国ネット通販最大手アリババ集団の創業者の馬雲(ジャック・マー)氏に続く中国で3番目の億万長者だ。黄氏は米ウィスコンシン大学マディソン校で修士号を取得した後、米グーグルに入社した。

 黄氏は、ピンドウドウの成功の秘訣はバーゲンとエンタメの要素を組み合わせたところにあると説明する。同氏は、ピンドウドウのあるべき姿を「コストコとディズニーランドのどちらでもあってほしい」と話す。何億人もの買い物客が米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」などの高額商品の大幅値引きに群がるほか、購入者を募れば募るほど商品が割引される「ゲーム」を楽しみながら農家直送の果物や野菜まで買えるという、大盛況のECプラットフォームが誕生した。

イーベイ上回る取扱量

 ピンドウドウ自身は在庫を抱えない。アプリ上に商品を載せて買い手と売り手を直接つなぎ、少額の販売手数料を請求するビジネスモデルとなっている。

 創設からわずか5年のピンドウドウはこのほど、今年3月末までの1年間で1兆1600億元(約17兆4000万円)超の商品を取り扱ったことを明らかにした。これは米ECサイトのイーベイを上回る取扱量であり、ネット通販大手のアリババ集団や京東集団(JDドットコム)が10年以上かけて実現した記録をすでに達成したことになる。

 一方、急激な成長で問題点も浮上している。注文量の申告方法や企業統治(コーポレートガバナンス)のあり方、とりわけ、莫大な現金流出で成長を維持するスタイルから、より持続可能なビジネスモデルへと移行できるかどうかが注視される。

 アナリストの見解は分かれている。多くは同社が中国のEC業界で独自の地位を築いたと考えているが、急成長のひずみが見られると警告するアナリストもいる。

 国盛証券のウー・ファン氏は、今年第1四半期に同社の純損失が以前の2倍超の41億元(約615億円)に膨れ上がる以前から、「現在のピンドウドウは中国インターネット史上最大のバブルだ」と指摘してきた。

日経ビジネス2020年7月6日号 80~82ページより目次