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新型コロナウイルス感染症拡大で電子商取引が拡大している。その雄であるアマゾンの株価は最高値に達した。しかし、同社は安穏としてはいられない。3つの大きな課題がのしかかる。第1は企業に求められる規範の順守、第2は膨張するバランスシート、第3は厳しさを増す競争だ。

ベゾス氏の書簡を株主は熟読するようになった(写真=AFP/アフロ)

 1995年の夏、ジェフ・ベゾス氏は妻と共に地下室でペーパーバックの箱詰め作業に精を出していた。痩せこけて、仕事に取りつかれた男だった。それから25年。同氏は独り身となり、その姿も筋骨隆々に変わった。そして恐らく、21世紀で最も有力な実業家となった。本業とは別に宇宙旅行計画に出資し、大手新聞社を所有する。著名投資家のウォーレン・バフェット氏からは誇大な称賛が寄せられ、ドナルド・トランプ米大統領には罵倒される。

 ベゾス氏が経営する米アマゾン・ドット・コムは、もはや単なる書店ではなく、時価総額1兆3000億ドル(約140兆円)の巨大なデジタル複合企業となった。消費者に愛される一方で、政治家からはたたかれる。投資家やライバル企業はアマゾンが勝たない方に賭けるなどとんでもないと心得ている。

 今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)で、デジタルサービスの利用が急増。電子商取引(EC)、物流、クラウドコンピューティングの分野で重要な役割を果たす同社が、欧米の人々の生活においてどれほど重要な存在となっているかが浮き彫りとなった。

 今回の危機に対応すべく、ベゾス氏は副業を脇に置き、アマゾンの日々の経営に戻った。表面的には、アマゾンはまたとない好況を迎えているように見える。だが世界第4位の時価総額を誇る同社も、様々な問題に直面している。企業に求められる規範の順守と膨張する資産、再燃する他社との競争だ。

日経ビジネス2020年6月29日号 100~101ページより目次