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南シナ海の岩礁などに軍事施設を建設し海域の実効支配を強める中国が、空に目を向ける懸念が高まる。東シナ海と同じく、南シナ海にも防空識別圏(ADIZ)を設定するとの観測が広がる。米軍もこの海域への意識を再び高めており、周辺諸国を含めた対立の激化は避けられそうにない。

並走する米国の空母。「ルーズベルト」「レーガン」「ニミッツ」(写真=U.S. Navy/ロイター/アフロ提供)

 米国が前回、空母3隻を太平洋海域に展開したのは2017年、ドナルド・トランプ米大統領が北朝鮮に対し「完全に破壊する」と強硬な姿勢を示した直後だった。

 今年6月半ば、米国は再び、この海域に空母3隻を配備した。フィリピン海にロナルド・レーガンとセオドア・ルーズベルト、さらに東の海域にニミッツだ。この3隻が搭載するジェット戦闘機を合わせると、アジアの大半の国が保有する機数を上回る。

 中国の評論家らは、今回のこの動きはほぼ間違いなく、新型コロナウイルスの感染拡大にもかかわらず米国は依然として強大であることを中国に見せつけようとするものである、とコメントした。米国政府の関係者らは今回の空母の運用が何を意味するかについて、それほど明確な発言はしていない。だが、南シナ海における最近の中国の動きに米国が神経をとがらせているのは明らかだ。

 4月3日、中国海警局の船が西沙(英語名パラセル)諸島付近でベトナム漁船を沈没させた。6月10日には同じ海域で、別のベトナム漁船が中国船に体当たりされた。4月と5月にはボルネオ(カリマンタン)島沖合で活動するマレーシアの掘削船ウエスト・カペラに中国海警局の船が接近。米国とオーストラリアがこの海域に軍艦を派遣する騒ぎとなった。

日経ビジネス2020年6月29日号 98~99ページより目次