全3240文字

欧州は経済的な理由で中国に譲歩してきたが、米中関係の悪化や香港情勢を受け、対中政策が揺らいでいる。大切なのは他国の思惑に踊らされることなく、欧州内で一貫した枠組みを堅持することだ。人権、民主主義、法の支配で譲らず、相互主義に立ち、公益のために協力するという原則を守るべきだ。

スウェーデンの街角に張られた、習近平国家主席の風刺画(写真=AP/アフロ)

 欧州連合(EU)は今、米国と中国の間で板挟みになっている。ドナルド・トランプ米大統領による一方的で好戦的な動きに引きずられ、中国と無用の対決に進むか。あるいは、言動がますます不安定化してきた米大統領に背を向け、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席率いる独裁政権に頭を垂れるか。

 だが、その選択自体が間違っている。米中間で激化する対立について、欧州の民主主義国はどちらかの側に立たざるを得ないとの意見をよく耳にするが、その考えは危険であり、愚かしくもある。トランプ氏のような人物が大統領の座にあるとはいえ、EUにとり、世界で最も力のある民主主義国との同盟関係である価値は、欧州的価値観への蔑視をあからさまに示す共産主義国と比べるまでもない。

欧州でも進む「中国離れ」

 とはいえ、EUは状況をただ静観しているわけにはいなかい。米国の大統領選挙とは関係なく、中国との関係はEUにとって戦略的にも経済的にも重要なな利益をもたらす。現在のEUの無策を、トランプ大統領が吐き散らす言葉のせいにしてはならない。欧州各国政府には対中政策が必要だ。欧州大陸の利益を守ると同時に、対米関係が時折乱れても動じることのない、独自の確固とした対中関係を確立するためには、EU内で一貫した政策の枠組みが必要なのである。

 これまでの10年、EUは経済的にプラスであるか否かという「色眼鏡」でしか中国を見てこなかった。中国はドイツの自動車メーカーや、フランス、イタリアの高級ブランド企業にとってうまみのある市場であり、財政の逼迫する東欧、中欧諸国にとっては資金供給源であった。