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米ウォルマートが2020年2~4月期の決算で増収増益を達成した。売り上げの伸びは9%、過去20年で最大だ。特に食料品の分野では、ライバルであるアマゾンをしのぐ。「金食い虫」とやゆされつつも、オムニチャネル戦略への投資を続けてきた成果が表れた。

ウォルマートが好調だ。2020年2~4月期は前年同期比9%の増収を記録した(写真=AP/アフロ)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が米国で全国的に拡大し始めると、消費者はパスタや除菌用ローション、トイレットペーパーの買いだめに走った。

 他の要素がそのままで、ただ売り上げが増えただけなら、こうした生活必需品を取り扱う業者にとってうれしい話だったろう。だが、変化は売り上げ増にとどまらなかった。ソーシャルディスタンス(社会的距離)が求められ、小売業者のサプライチェーンと店舗運営は破綻をきたした。

 米電子商取引(EC)最大手のアマゾン・ドット・コムは今年1~3月期に記録的な売上高を計上したものの、COVID-19の世界的な拡大(パンデミック)に対応するためのコストが急増し、純利益は減益となった。

売上高の伸びは20年で最大

 これに対し、米小売り最大手ウォルマートはどうか。このパンデミックにアマゾンよりうまく対処できたのだろうか。ウォルマートは米食料品市場の4分の1を占める。全米に5000店以上を展開。従業員数は150万人で、うち23万5000人はCOVID-19に伴う需要増に対応すべく雇用した臨時従業員だ。

 この問いへの答えは5月19日に判明した。圧倒的な「イエス」である。2~4月期の売上高は1350億ドル(約14兆5000億円)。前年同期比9%増と、過去20年で最大の伸び率を記録した。既存店ベースの売上高の伸びはさらに大きい。「オムニチャネル」戦略に基づく売上高も74%増加した。オムニチャネルとは、オンラインでの販売と店舗での受け取りを組み合わせた形態だ。

 アマゾンと異なり、ウォルマートは純利益も伸ばし、同4%増の40億ドル(約4300億円)を記録した。COVID-19対応のためのコストを約9億ドル(約1000億円)計上したにもかかわらずである。従業員にかかる医療費の会社負担分や賃金の割増し、従業員へのボーナスなどが特別の負担となった。

 米アーカンソー州で生まれ、世界屈指の大企業に成長したウォルマートは社会に不可欠な存在であるばかりでなく、機敏な対応力も持ち合わせている。

 売り上げが急増した理由は消費者のパニック買いだけではない(もちろんそれもあった。特に3月はその傾向が顕著で、同社の月間売上高は前年比15%増となった。同社は生活必需品に対する需要の異様な高まりを報告した)。

 4月に入り初期のパニックが和らぐと、需要も多少は落ち着いた。それでも売上高は前年同月比で9.5%増加。伸び率は2月と比べて3倍近い。この期間を気分よく過ごそうと考えた人々が、政府から得た給付金の一部を衣服やビデオゲームなど利益率の高い商品に費やしたからだ。

 ウォルマートが好業績を達成できた背景として、コストを抑えるノウハウも大きい。少なくとも、経費の上昇が手に負えなくなることはない。従来から定評のある能力だ。2~4月期の売上原価は前年同期比約10%増で、売上高の伸びとほぼ一致している。

 ウォルマートは経営手腕についても如才なさを発揮した。米シティグループのポール・レジュエイ氏は、ウォルマートはCOVID-19が拡大する以前から約100店舗で宅配サービスを手掛けていたと指摘する。オンライン注文に対応していた45の配送センターで作業が追いつかなくなったため、宅配サービスの機能を直ちに約2500店舗に拡大した。

日経ビジネス2020年6月1日号 90~91ページより目次