全3840文字

米国の著名エコノミストが、米産業界に倒産の大波が押し寄せると予測する。いくつかの兆候が見て取れる。米企業が発行する社債の3分の2が「ジャンク債」となった。朗報もある。世界金融危機と異なり資金の出し手は豊富だ。しかし予断を許さない状況であることに変わりはない。

20%に至る可能性も
●世界の債券のデフォルト率
出所:S&P Global/Moody's/The Economist

 「膨大な数の企業が倒産するだろう」。米セントルイス連邦準備銀行のジェームズ・ブラード総裁は5月12日にこう予測した。オバマ政権で行政管理予算局局長を務めたピーター・オルザグ氏(現在は米投資銀行ラザードで働く)も同様の警告を発する。「米経済は倒産が雪崩を打つ重大なリスクに直面する恐れがある」。米経済はどこまで悪化するのだろうか。

 米国では既に大企業の経営破綻が急増している。今年、世界金融危機が頂点に達した2009年以降で最悪の年となるのは間違いない。

 この数週間、米著名企業が次々と破綻に追い込まれた。百貨店のニーマン・マーカス、アパレルのJクルー、スポーツジムのゴールドジムなどだ。レンタカー大手のハーツや、シェール業界のパイオニア、チェサピーク・エナジーも倒産の瀬戸際にある。

 今後数カ月にわたり米経済が一段と冷え込めば、さらに多くの企業が窮地に陥ることは論を待たない。ここで3つの疑問が浮かび上がる。第1は、今後吹き荒れる倒産の嵐の規模を示す指標は何か。第2は、その惨状がもたらす苦痛は金融危機のそれと比べていかほどか。第3は、破産法の適用を申請する以外に企業が取り得る現実的な方策はないか、である。

 まず、倒産劇の規模を示す予兆について見よう。その一つとなり得るのが、「投機的格付債(ジャンク債)」の急増だ。米国では金融機関以外の企業が発行する社債の3分の2が、ジャンク債かその1段上のレベルに分類される。

 米投資銀行のゴールドマン・サックスは4月、次の見通しを示した。すなわち、現在は「投資適格」とされる社債のうち5500億ドル(約60兆円)超が10月までにジャンク級に引き下げられる(現在のジャンク債の市場規模の40%に相当)。

ジャンク債が示す暗い展望

 米ニューヨーク大学のエドワード・アルトマン名誉教授は、発行した社債がジャンク債となった企業の約8%(約1900社)が今後12カ月以内に債務不履行(デフォルト)に陥ると推測する。この数字は向こう2年間で20%に跳ね上がる可能性がある。同氏は1億ドル(約107億円)以上の負債を抱える大企業165社が少なくとも、今年末までに倒産するとも予測する。

 「ディストレスト・レシオ」も問題を浮き彫りにしている。ディストレスト債券は、米国債との利回り格差が10%以上あるジャンク債のこと。格付け大手の米S&Pグローバルによれば、米国のジャンク債全体に占めるディストレスト債の比率(ディストレスト・レシオ)は、4月10日までに30%に上昇した。この値は3月16日には25%だった。

 4月には、世界中で32件のジャンク債がデフォルトした。これは金融危機以来の高い水準である。このうち21件が米国企業だ。S&Pは米国のジャンク債の直近12カ月間のデフォルト率は4月には3.9%に達したとみる。3月の3.5%を上回る。

日経ビジネス2020年5月25日号 74~75ページより目次