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新型コロナウイルス感染症向け検査キットの生産で、韓国は世界第3位に位置する。注文が殺到し、生産現場は人手不足に悪戦苦闘。加えて材料の逼迫が懸念されるようになった。MERSに苦しんだ経験から、必要な承認を政府が迅速にできるよう規制改革していたことが功を奏した。

韓国検査キットメーカーのラインの様子。人手不足が高じている(写真=AFP/アフロ)

 この1カ月、ノ・ヒュンジュンさんは韓国・大田にあるサイエンスパークの奥で1日12時間の労働を続けている。勤務時間のほとんどは、化学試薬のプラスチック容器にラベルを貼る作業に費やす。新型コロナウイルス感染症の検査に使う試薬だ。

 こうした作業はノさんのキャリアからかけ離れたものだ。35歳の彼女はシステム管理の専門家として高度な教育を受けている。だがウイルス検査キットを製造する韓国のバイオテク企業が海外から殺到する注文への対応に奮闘するなか、その一社であるソルジェントは多くの技術専門家を製造ラインでの作業に当たらせるようになった。ノさんもその一人だ。

 ノさんは「これは私の本来の仕事ではない。けれども、今は労働力が極めて不足しているので、自分も朝から晩まで生産部門を手伝っている」と語る。

 韓国は、感染者の数が中国に次いで多い時期があった。だが、50万人近くに検査を実施したことが事態の収拾につながった。韓国はその後またたく間に、世界最大級の検査キット生産国となった。

 これまでに、国内のバイオテク企業5社が新型コロナウイルス感染の有無を調べるキット(PCR検査)の国内向け販売を政府から認可されている。大統領府によれば、1日13万5000人の検査を可能にするだけの量を既に生産している。

需要は7倍に拡大する見込み

 感染症に関わる技術の開発と普及を支援する非営利組織「FIND」(本部スイス)によると、新型コロナウイルス感染症の検査キットを商業生産している企業は韓国に合計22社。この数を上回るのは米国と中国だけだという。

 だがサプライチェーンの中核部分が負担にあえいでいるのは誰の目にも明らかだ。規模を急速に拡大し、従業員の団結心を促進する策を講じてはいるものの、とても追いついていない。

 ソウルのアナリストたちは検査キットの世界的な需要について、3月末時点で1日に約70万個と試算していた。さらに、この数字は今後7倍に増大すると予測する。