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新型コロナウイルスの感染拡大を前に、欧州各国は国境管理に歩みを進めた。域内の移動の自由というシェンゲン協定の理念に反する措置である一方、感染をとどめる効果は小さい。大事なのは国境上の措置ではなく国内で講じる措置だ。

EU以外の国からの入域制限を提案するフォンデアライエン欧州委員長(女性)。登壇者も出席者も距離を取って感染を予防している(写真=左:ロイター/アフロ、右:AFP/アフロ)

 オーストリア西部チロル州にあるイシュグルは、欧州でも人気の高いリゾートだ。その魅力は様々。キラキラと輝く山の斜面が200kmにわたって続く。アルプスの絶景。アフタースキーには羽目を外して遊ぶことができる。

 そのイシュグルは今、新型コロナウイルス感染のホットスポットとして欧州でワーストワンを争う土地になっている。欧州(特に北欧諸国とドイツ)で見つかった感染者のうち数百人がこの地に滞在していたことが判明した。その多くは、あるバーを訪れていた。踊り子がテーブルに立って踊ることで有名な、人々でごった返す店だ。

 現在、オーストリアから他国に通じる航空便、道路、鉄道は封鎖され、各国政府はイシュグルから帰ってきた人への検疫を実施している。このリゾート地は今、一時的な休業状態にある。

 新型コロナウイルスが国から国へと広がる速さに驚いた欧州の各国は、おなじみの対策を取った。国境管理だ。3月中旬の1週間で今回のパンデミック(世界的な大流行)がいかに大規模であるかを認識し、数カ国は入国制限を始めた。だが、場当たり的でまとまりを欠く印象がぬぐえない。