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トランプ米大統領は新型コロナウイルスがもたらす脅威の大きさに気づきつつあるが十分とは言えない。学ぶべきはローマの賢帝とアイルランドの首相だ。アウレリウス帝は私財を投げうち、貴族に課税し、疫病に対した。バラッカー首相は、感染拡大に苦しむ国の人々と「共にいる」姿勢を打ち出した。

富裕層と企業に甘い姿勢が垣間見えるトランプ大統領(左)(写真=AP/アフロ)

 「すべてのスーパーヒーローがスーパーマンのようなマントを身にまとっているわけではない。白衣と手袋を着けたヒーローもいる」。こう語ったのは、ドナルド・トランプ米大統領でもボリス・ジョンソン英首相でもない。アイルランドのレオ・バラッカー首相だ。

 他の災厄と同じく、感染症の拡大は人の性格を、中でも指導者の性格をあらわにする。重要な特質は誠実さ、勇気、品位だ。

 新型コロナウイルスがもたらす脅威がいかに大きいか、トランプ大統領はこの数日の間にようやく把握したようだ。残念ながら、同大統領はこれまでずっと理解しているふりをすることにエネルギーを費やしてきた。そして、自らが発するメッセージ自体の価値を引き下げてしまっている。メッセージは信頼されていてこそ価値を持つ。

航空会社は支援受けるだけ

 感染症対策の手引書は、少なくとも古代ローマのマルクス・アウレリウス帝まで遡ることができる。五賢帝の一人で、疫病で亡くなった。裕福なローマ人たちが地方の別荘へ逃げていく中、同皇帝は首都にとどまり、人々に範を示した。トランプ大統領もこれまでのところ首都にとどまっているが、範を示すには至っていない。

 アウレリウス帝は周囲からの助言に耳を傾け、専門家に現場を任せた。これに対してトランプ大統領は、国立アレルギー・感染症研究所の所長で免疫学者のアンソニー・ファウチ氏をはじめとする保健専門家の警告に耳を傾けることなく、貴重な数週間を無駄にしてしまった。同大統領の娘婿、ジャレッド・クシュナー氏も、新型コロナウイルスの感染拡大をめぐるメディア報道は誇張されていると訴えた。