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クレジットカードのビザの成長が著しい。海外メディアは次なる時価総額1兆ドル企業になり得る存在と注目する。その強さの秘密は市場での複占だ。加盟店と利用者を同時に増やすのは困難で新興企業が参入しづらい。3つの脅威が立ちはだかるものの、その地位を覆すのは当面難しいだろう。

ビザのカード発行枚数は34億に上る(写真=ロイター/アフロ)

 金融市場の王者といえば、かつては1兆ドル(約110兆円)規模の資産を持つ大銀行だった。だが現在は異なる。この3月初め、米クレジットカード最大手のビザが金融業界で時価総額トップに立った*。

 新型コロナウイルス感染拡大を受け株式市場が急落する中、ビザの株価も下落している。世界中の消費者が自主隔離を進め、消費の落ち込みが予想されることから、アナリストは、ビザが稼ぎ出す取引手数料も低下し収入が減少すると見る。

 しかし、ビザが被る影響は、これまで業界トップの座を占めていた米金融大手JPモルガン・チェースなどより小さい。また投資家が「ビザはウォール街の各社よりも回復力がある」と見ていることは、今なお2910億ドル(約32兆円)もの時価総額を維持していることよりも、より多くを物語っているかもしれない。業界内の一つの歯車にすぎない同社がどうやってここまで上り詰めたのだろうか。

 ビザの幹部らに問えば、同社が持つ技術とマーケティングのセンスの良さゆえだと誇らしげに答える。それもあるだろう。しかし、ビザが成功した真相はもう少し平凡なものだ。安定的で寡占状態にある決済業界のトップであることが、とてつもない利益を生み出す源泉になっている。

実態は商取引の仲介業

 事情に詳しくない多くの人は、ビザを、VISAマークがついたクレジットカードを利用する顧客に信用枠を提供する金融業者と混同している。同社が現実に行っているのは、売り手と買い手をつなぐ複雑な仲介だ。同社は現在、6100万軒以上の加盟店と34億枚のビザカードをつないでいる。世界の人口のほぼ2人に1人がこのカードを持っている計算になる(その多くは銀行が発行している)。

 ビザがこの仲介から得る手数料はわずかだ。しかし、その取引の規模が大きいため手数料の総額は大きくなる(2019年の取扱総額は約9兆ドル=約1000兆円=で、世界の国内総生産=GDP=合計の10分の1を上回る)。新型コロナウイルスの感染が拡大する前、19年の収入は前年比約10%増の230億ドル(約2兆5000億円)に達した。