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原油価格が暴落した。サウジアラビアとロシアが対立し、どちらも増産する意向を明らかにしたためだ。新型コロナウイルスの感染拡大で需要の落ち込みは避けられず、原油価格の早期回復は期待薄だ。米シェールオイル企業や、英BPなどの大手も無傷ではいられない。投資家の石油離れが懸念される。

サウジアラビアのムハンマド皇太子(左)とロシアのプーチン大統領。再び握手できる日はいつ来るのか(写真=代表撮影/ロイター/アフロ)

 サウジアラビアが原油価格を巡る戦いの火蓋を切った。3月9日、原油価格は30%も急落。1日の下げ幅としては1990年代初頭の湾岸戦争以降で最大となった。

 サウジ政府が販売価格を下げ、増産に転じるとの意向を明らかにしたため、国際価格の指標であるブレント原油価格は1バレル当たり31.02ドル(約3400円)まで下落した。米国産原油の指標WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)も下がり、同27.71ドル(約3000円)となった。

 なぜ、世界最大の原油輸出国であるサウジが、新型コロナウイルス(COVID-19)危機で需要が弱まっているこの時期に、これほど攻撃的な動きに出たのだろうか。また、この動きは石油業界全体にとって何を意味するのだろうか。

 COVID-19の感染拡大が世界経済に打撃を与える中、サウジは石油輸出国機構(OPEC)と非加盟のロシアを率い、いっそうの減産を進めようとしていた。ところがロシアはこの計画に難色を示した。ロシアは2016年以来、いわゆるOPECプラスの一員として、サウジと協調して原油相場を支えてきた協力国だ。サウジは、反旗を翻したロシアに刃を向けた。

 サウジ政府は、原油を増産して販売価格を大幅に下げる意向を明らかにした。アナリストらによると、これはOPECプラスを見捨てたロシアを罰するための動きだという。

 彼らは、サウジには世界最大の輸出国としての地位を固める狙いもあると続ける。同国政府が、ロシアなど生産コストの高い産油国との対決姿勢を明確にしようとしているのは明らかだ。

 サウジの石油政策に詳しい人物は、次のように説明する。「OPEC内では(減産の)合意があった。ロシアはこれに反対し、4月1日からはどの国も自由に生産できると主張した。そこでサウジも自ら持つ権利を行使したのだ」

 アナリストらは、サウジのこのやり方が果たして賢明だったか疑問視している。サウジが競合国から市場シェアを奪えると信じていても、サウジ経済は原油価格暴落の影響を受けざるを得ないからだ。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子がかじを取るサウジは、主張を押し通す必要があると感じた時にはリスクを伴う予測不可能な動きに出ることで知られている。