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株式市場が下落する中、近年企業経営において主流となりつつある「ステークホルダー重視の経営」はどうなるか。目先の収益の落ち込みを補うべく、コストカットに走ろうものならば、今までうたった「長期目線の経営」はウソとなる。だが一方で、難局においてすべてのステークホルダーを満たす経営は難しく、バランスを取る必要がありそうだ。

史上最高値を付けていたナスダックなどの米主要株価指数が急落。米国市場の値動きは乱高下が続き、景気後退懸念が浮上している(写真=AP/アフロ)

 株式市場が下落する中で、企業は「ステークホルダーにやさしい経営」をどこまで追求できるだろうか。企業経営に対する考え方が急速に変化し、従業員や消費者、サプライヤー、そして地球全体の長期的な利益を実現することこそ重要だとの見方が世間のコンセンサスとなりつつある。次の四半期の業績に対する投資家の期待を裏切らないことだけに汲々としていた時代は、過去のものとなった。

 だがこのように旧来型の株主利益至上主義が非難されるようになったのは、長期にわたる強気相場の局面で起こった流れだ。過去最高益の更新が続く状況で初めて、CEO(最高経営責任者)はすべての利害関係者の利益について、積極的に考えるようになった。たとえ業績予想を達成できなくても、経営者は自分たちを追放する権限を持たないすべての人々の利益を重視するようになったのだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大は、そうした恵まれた環境が長続きしないことを改めて突き付ける。株価が激しく乱高下し、世界のサプライチェーンが停止に追い込まれる事態となった今、近年の経営理念の転換が、早くも試練の時を迎えている。

 中央銀行は感染拡大の経済的影響を和らげようと、迅速な措置を講じ始めている。ほとんどの企業経営者は、依然として業績が急回復するとの願いを捨てていない。だが企業は今後数週間に、これまでに経験したことのないリスクとの戦いを強いられるだろう。社会的責任を果たすことを前面に打ち出してきた企業が、その真価を問われている。