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新型コロナウイルスは、春節の休暇で地方の家に戻っていた農民工にも打撃を与えている。地方の村も隔離され職場に戻ることができない。その間の給料が支払われる保証はない。都市に戻っても2週間、自主的に待機する必要がある。被害者は感染した人たちだけではない。

北京市の光景。隔離政策のため人が戻ってこない。2月21日になっても、春節の飾り物が飾られたままで、閑散としている(写真=UPI/アフロ)

 四川省北西部のとある村の家の玄関に「家族こそ幸せ」と書かれたメッセージが掲げられている。ビロードの覆いをかけたマージャン卓からテレビの前に置いた子供用の椅子、テレビの両脇に据えたピンク色のプラスチック製スピーカーまで、家族の再会を祝う準備はすべて整えた。

 この家の主である50代の夫婦は6週間をかけて家中を隅々まで片付け、ピカピカに磨き上げた。北京に働きに行くようになって数年がたつ。こんなに長い休みをとったのは初めてのことだ。

 だが夫婦は、この長い休暇を自分たちの意思で選択したわけでもなければ、それに伴う減給を自ら選んだわけでもない。遠く離れた農村から出稼ぎに出る1億7300万人の他の多くの農民工と同様、彼らの職場は新型コロナウイルスのせいで閉鎖されてしまった。

 さらに悪いことに、この静かな春節(旧正月)休みの間、たった1人の子供にも会えていない。32歳になる息子は隣接する陝西省でシェフをしている。移動制限が課されているため、その妻と8歳の息子とともに陝西省を離れることができなくなった。

 医学的な見地からすれば、この夫婦が住む地域は新型コロナウイルスの影響をあまり受けていない。本稿を校了する時点で、ここから最も近い大都市である綿陽市とその周辺の村で感染が明らかになった者は22人にとどまっている。死者は出ていない。