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COP25は不調に終わり、「気温上昇2度未満」という目標に向けた歩みは足踏みしている。しかし技術の進歩でCO2削減コストは大幅に下がり、排出量を実質ゼロにすることは可能になっている。特にCO2排出量の大きな中国は、将来の「先進国」として排出量の削減努力を拡大すべきだ。

アディール・ターナー卿
米マッキンゼー・アンド・カンパニーや英スタンダードチャータード銀行取締役などを経て、2008年から13年まで英金融サービス機構(FSA)長官。現在は投資家ジョージ・ソロス氏が設立した新経済思考研究所のシニアフェロー。
中国は風力など、再生可能エネルギーによる発電の拡大に取り組んでいる(写真=Imaginechina/アフロ)

 2010年代は、気候変動との戦いに敗れた10年間として記憶されるかもしれない。15年にパリで開催された第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)では、196カ国が「2度目標」に合意した。世界の平均気温上昇を、産業革命前から2度以内に抑える。

 しかし、世界で排出される温室効果ガスは増え続けている。大気中の二酸化炭素(CO2)濃度は過去80万年で最も高い。現状の対策では、2100年までに気温上昇が約3度に達するだろう。

 しかも、2019年にスペインのマドリードで開かれたCOP25の話し合いは不調に終わった。各国政府は「カーボンクレジット(取引される炭素排出量)」の価値と割り当てを巡り、言い争いに終始した。これは、もはや信頼されていない以前の政治体制から引き継いだ遺物だ。

 一方、この10年における技術的進歩には目を見張るものがある。温室効果ガスを削減するのにかかるコストは非常に小さくなった。10年前には望むことさえできなかったレベルだ。発電コストは太陽光で80%以上、風力で70%以上下がった。リチウムイオン電池のコストは、10年には1キロワット時(kWh)当たり1000ドルかかっていた。今では同160ドル(約1万8000円)ですむ。

日経ビジネス2020年1月20日号 102~103ページより目次