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トランプ大統領が12月、ブラジルとアルゼンチンからの輸入に対し追加関税を課すと表明した。この措置はかえって輸入高を拡大させる可能性がある。矛盾する政策を打ち出す同大統領が関与するほど、中国は妥協する気をなくしかねない。

トランプ氏はツイート1つで制裁関税を課す(写真=The New York Times/アフロ)

 ドナルド・トランプ米大統領が米国の通商政策を指揮しようとしており、これが不協和音を生んでいる。

 同氏は12月2日、ブラジルとアルゼンチンから輸入する鉄鋼とアルミニウムに追加関税を課すと表明した。その数時間後、米通商代表部(USTR)は欧州からの輸入に対する2つの関税を検討する意向などを示した。それからの数日間、米議会はますます混迷した。北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる新協定USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)について民主党の承認を得るための駆け引きが激化した。

 以上のことが中国との貿易戦争と並行して起きている。

 米政権による「米国第1」の主張は揺るぎない。だが、トランプ氏と各機関の足並みはそろっていない。トランプ氏がころころと意見を変えながら発信を頻繁に繰り返しているのに対し、USTRは時間をかけて慎重に事を進めている。

 発端は、12月に入ってトランプ氏がアルゼンチンとブラジルに対して新たな関税を「ただちに」かけるとツイートしたことだった。同氏は、両国が通貨を「大幅に」切り下げたため、米国の農家が苦しめられていると主張した。

 だが、同氏が関税をしてもこの問題は解決しない。アルゼンチンもブラジルも自国通貨(それぞれペソとレアル)を切り下げ米国の農家につけ込もうなどとしてはいないからだ。むしろ、自国経済が動揺し、それに伴い通貨が下落するのを下支えするのに四苦八苦している。