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アリババ集団が香港市場に上場した。中国政府から点を稼げるなど3つのメリットが期待できる。次なる目標は、米アマゾンと同等の存在と見なされるようになることだ。一方で課題もある。中国政府との距離、巨大化したがゆえの規制が同社の肩にのしかかる。

香港証券取引所で上場を祝うダニエル・チャン氏(右から3人目)(写真=ロイター/アフロ)

 理性的な考え方から離れられない人は、中国EC(電子商取引)大手のアリババ集団について考えてみるとよい。同社は数字の「8」にこだわる。「8」は中国で最も縁起の良い数字とされる。

 同社は11月26日、香港市場に上場した。調達額は880億香港ドル(約1兆2300億円)に上る。香港市場での証券コードは「9988」だ。「88」は「アリババ」の「ババ」と発音が同じであるだけでなく、吉数が2回続く。取引開始を告げるドラが打ち鳴らされるや、株価は公開価格の176香港ドル(約2450円)から急騰し、「188」香港ドル(約2620円)という縁起のよい値に達した。

 運もアリババに味方した。香港証券取引所にほど近い「畢打街」は、19世紀には株式仲買人が株取引を行うため集まる場所だった。夏以降、反中国を掲げるデモが繰り返されるホットスポットとなっており、取引所にも時折、催涙ガスの臭いが流れ込んだ。だが11月24日に実施された香港区議選で民主派が地滑り的大勝利を収めた後、少なくとも一時的には混乱が収まっている。

 運が味方したかどうかはさておき、香港市場への上場はアリババに3つの恩恵をもたらす。第1に、激しいデモが繰り返される中、金融都市・香港の将来に対する信頼を示すことで、中国政府から点が稼げる。

香港上場で得られる3つの利点

 第2はリスク分散だ。アリババは米株式市場にも上場している。ここでのリスクを分散することができる。同社は2014年に米ニューヨーク市場で新規株式上場し史上最高の調達額を記録したが、最近は貿易戦争に関わる混乱の影響を受けていた。

 第3の恩恵は、アジアの機関投資家が同社株を扱いやすくなることだ。これらの投資家は、貿易や地政学的緊張というプリズムを通して中国を見たくはないと考えているかもしれない。アリババ株は近々、香港市場と上海市場および深圳市場を結ぶストックコネクト(編集部注:異なる証券取引所間での相互取引を可能にする制度)の対象銘柄となる可能性がある。これに組み入れられれば、中国本土の投資家がアリババ株に殺到することも考えられる。

 このプロセスにおいて、アリババはすでに1つ、勝利を勝ち取っている。中国ネット市場における仇敵、騰訊控股(テンセント)の株価との差が縮小したのだ。香港市場に上場していたテンセント株に比べてアリババ株はずっと割安な水準で評価されてきた。

 そしてアリババは今、より大きな“勲章”を狙っている。同社経営陣は、世界のEC市場における最大の競争相手、米アマゾン・ドット・コムと同等に評価されてしかるべきだとみる。アマゾンの時価総額が8900億ドル(約97兆円)であるのに対し、アリババは5200億ドル(約57兆円)にとどまる。アマゾンの予想利益に基づくPER(株価収益率)は約67倍で、アリババの2倍を超える。