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ルイ・ヴィトンやディオールなどのブランドを擁する仏LVMHが、米宝飾品ティファニーを買収する。拡大したLVMHの規模の力は、買収ブランドへの業績圧力を弱めて余裕を与えるなど、様々な利点となる。しかし買収できるブランドには限界があり、市場環境も変わりつつある。LVMHは時代の変化に対応できるだろうか。

ヴィトンのバッグを持つトランプ氏(左)とLVMHのアルノー氏(右端)(写真=ロイター/アフロ)

 すべてを持ち合わせている高級ブランドグループに、さらに何を買い足せばいいのか。恐らく、もっと多くのダイヤモンドだろう。

 世界の高級品市場で既に最大手である仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンは11月25日、米宝飾品のティファニーを買収すると発表した。ウォール街の債券トレーダーが恋人を婚約者に変える可能性を高めるべくお金をつぎ込む、あのティファニーだ。

 同社はLVMH傘下に入る76番目の「メゾン」(ブランド)となる。同グループはほかに、ルイ・ヴィトン、クリスチャン・ディオール、シャンパンのヴーヴ・クリコなどのブランドを抱える。LVMHの会長で最大株主でもあるベルナール・アルノー氏が築いたこの巨大グループの下には、あといくつのブランドが加われるのだろうか。

 ティファニー買収は、傷一つない宝石のように、非常に高額で合意した。LVMHは純債務も含め169億ドル(約2兆円)を支払う。これはティファニーの売上高の4年分に近い。それでも、この買収は似合いの縁組みにふさわしい熱狂をもって迎えられた。

 高級品産業はかつて、家内工業を営む欧州の同族経営企業の集まりにすぎなかった。それが今では少数の巨大グループが支配する分野となった。ここ数十年の間に、名の通ったブランドが次々と巨大グループにのみ込まれ、それも致し方なしと見なされるようになった。ブランドを取り込んできたのはLVMHのほか、競合の仏ケリング(グッチやバレンシアガを抱える)とスイスのリシュモン(カルティエやモンブランを擁する)だ。

 LVMHはティファニー買収でこの市場の頂点の地位を固める。アルノー氏が30年前に経営権を引き継いで以降の同社の興隆はまさに目を見張るものだった。株価はこの5年で3倍に上昇。特に今年1月からは60%急騰した。時価総額2060億ユーロ(約25兆円)は、欧州連合(EU)に拠点を置く企業として最も時価総額の高い英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルの向こうを張る。

 LVMHの株式の半数近くをアルノー一族が握る。同氏は欧州一の大富豪と言われている。フランス北部ルーベという田舎町で生まれた同氏は、家族が経営していた建設会社を不動産会社に、さらには高級品を扱う会社へと変えていった。1980年代には、苦境に陥っていた繊維会社を買収した際に、その一部としてディオールを入手。さらにLVMHの経営権を獲得した。