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カナダのトロントがスマートシティーの開発プロジェクトを進めている。パートナーはグーグルだ。同社は、自動運転走行を最適化する信号機など快適な住空間を提案する。ただし、センサーの設置が前提だ。プライバシーの提供は得られる利便性に見合うのか。トロントはグーグルを統制することができるのか。

スマートシティー構想が進行するトロントのウオーターフロント(写真=ロイター/アフロ)

 筆者は最近、秋の陽光を浴びるカナダのトロントを訪れた。オンタリオ湖畔のウオーターフロントに位置する再開発地区を視察するためだ。筆者が向かったのは、薄汚れた倉庫や建設現場が並ぶ、荒涼とした一角に立つ(周囲とはいかにも不釣り合いな)小さな水色のトレンディーなビルだった。

 一見したところ、インスタレーションアート(編集部注:場所・空間全体を使って3次元的表現を行う芸術)のように見えるかもしれない。だが、実はこの水色のビルは、ハイテク戦争の新たな最前線なのだ。

 再開発を担うカナダの政府機関「ウオーターフロント・トロント」は10月31日、米サイドウォークに対し、プロジェクトの進行に関する暫定的な認可を与えた。サイドウォークは米グーグルの一部門だ*。水色のビルを囲む周辺地域をスマートシティーにするこのプロジェクトは、13億ドル(約1400億円)の工費が見込まれる。

グーグルの参加を巡り大論争

 グーグルという巨大ハイテク企業を都市の設計に加えるべきか否かを巡り、トロントでは何カ月にもわたる激しい政治論争が続けられた。議論があまりにも白熱したため、サイドウォークは認可を得るのに大幅な譲歩を迫られた。プロジェクトは来春、公聴会を開催した後、最終承認を得る必要がある。

 しかしながらこのハードルを越えれば、グーグルだけでなくトロントも、一つの山場を越えることになる。サイドウォークが目指しているのは、西欧諸国でも最先端のスマートシティーをつくり上げることだ。スマートシティーには人々とつながり、監視し、双方向に作用する数々の建築物が建てられる。