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米国企業で、経営幹部が従業員との性的関係を理由に退任を余儀なくされる事例が続いている。MeToo運動の影響もあり、かつては容認された性的関係をめぐる社内規則が書き換えられつつある。特に力関係が対等でない場合に問題が起こりやすく、多くの企業は上司に部下との交際を禁じている。

職場恋愛ののち退任したボスたち
出所:FT Research

 レイ・クロック氏、ロバート・ノイス氏と言えば、20世紀半ばの米国実業界の大立者だ。クロック氏は米マクドナルドをファストフード界の大帝国へと育て上げた。ノイス氏は米半導体メーカー、インテルを創業し、後に「シリコンバレーの市長」とさえ呼ばれるようになった。

 両氏は、職場で恋愛相手を見いだした点でも共通する。クロック氏の相手はジョーン・スミス氏。米サウスダコタ州でマクドナルドのフランチャイズ店を営む人物の妻だった。ノイス氏の相手は、インテルの人事部長アン・バウアーズ氏だった。時代は1960~70年代。この恋愛関係は両氏のキャリアにほとんど影響しなかった。

 しかし、社内恋愛に対する見方は変わった。2018年にはインテルのブライアン・クルザニッチCEO(最高経営責任者、当時)が部下と関係を持ったことが発覚して辞任。今年11月にはマクドナルドのスティーブ・イースターブルックCEO(同)が従業員と関係を持ち「会社の行動規範に違反し判断力の弱さを露呈した」として解任された。

 取締役会や人事部がMeToo革命を念頭に置き始めたのに伴い、性的関係についての社内規則が書き換えられつつある。特に経営幹部に対して厳しい改訂だ。

 英監査法人プライスウォーターハウスクーパース(PwC)によると、18年中に解任されたCEOの解任理由としては、業績不振よりも倫理面における過失の方が多かった。これは、PwCが世界の大企業上位2500社を対象に00年に調査を開始して以来、初めてのことだという。今日では、社内での不道徳な関係は、解雇の対象となる規則違反とされることが少なくない。

日経ビジネス2019年11月18日号 98~99ページより目次