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トランプ米大統領がしきりに利下げを要求し、米連邦準備理事会(FRB)の独立性が疑問視されている。10月末に利下げを決めたことが、こうした見方を助長する。だが、FRBは戦う構えだ。貿易戦争のツールにはならないことを示唆。加えて、パウエル議長は強烈な攻撃をかいくぐってきた強者だ。

米FRBのパウエル議長。その振る舞いは温和だが……(写真=UPI/アフロ)

 米デューク大学と英ロンドン・ビジネススクールのエコノミストがこのほどある調査を発表した。そのテーマはかつては考えられもしなかったものだが、今は時宜を得ている。彼らは、米連邦準備理事会(FRB)に対するドナルド・トランプ米大統領のツイート攻撃が、金融市場にどれほどの影響を及ぼしているかについて調べたのだ。

 調査結果は、希望を抱いてもよいと思わせるだけの根拠を示すと同時に、不安も抱かせるものだった。

 明るい点は、一層の金融緩和を求める同大統領の要求が市場に及ぼす目に見える影響は、これまでのところ穏やかなものにとどまっていることだ。トランプ氏が攻撃を繰り出すたびに、フェデラルファンド(FF)金利先物のインプライドレートは平均0.30ベーシスポイント(bp)ずつ低下した。これまでの低下幅は累積で10bp前後になる。大局的な視点に立てば、この程度の低下は微々たるもの。もし同氏がこの調査を読んだなら(起こりそうもないことだが)、間違いなく失望するだろう。

 一方、憂慮すべき点もある。トランプ氏がツイートするたびに、先物価格が動いたことだ。この調査に参加したエコノミストによれば、この事実は「FRBが政治的圧力から完全に独立した機関であると市場は認識していない」ことを示唆している。つまり、ある程度の影響がすでに及んでいるのだ。

FRBへの責任転嫁狙う政権

 FRBが10月30日に利下げに踏み切ったにもかかわらず、FRBとトランプ大統領の争いは来年には恐らく(収まるどころか)一段と激しさを増すと思われる。そう考える理由が2つある。

 明らかな要因は、米国経済が減速していることの責任を転嫁すべく、ホワイトハウスがスケープゴートを必死に探していることだ。トランプ氏は表向きは強気な姿勢を崩していない。米商務省が同日、7~9月期の経済成長率が1.9%だったと公表すると、同大統領はツイッターで「米国経済は史上最高の状態にある」と高らかに宣言した。

 しかしながら、企業の設備投資と輸出は急落した。別に天才でなくとも、この原因がどこにあるか突き止めることができる。貿易戦争は企業の業績見通しに深い不確実性をもたらした。仮に米中間で貿易協定が成立しても、この不確実性が解決するとは思えない。企業経営者のほとんどは、停戦が長続きするとは信じていないからである。